2023/10/12

米国感染症学会週間(IDWeek 2023)でのリアルワールドデータに関する発表について - エンシトレルビル、セフィデロコルの良好な臨床試験結果と臨床使用成績を発表 -

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、2023年10月11日~15日に開催される米国感染症学会週間Infectious Disease Week 2023(以下「IDWeek 2023」)において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬であるエンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®、以下「エンシトレルビル」)および新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬セフィデロコル(米国での製品名:Fetcroja®、欧州での製品名:Fetcroja®)の新たに得られた臨床データの発表を行うことをお知らせいたします。

<エンシトレルビルに関する主な発表>

・  日常診療下におけるエンシトレルビルの安全性と有効性1

Safety and Effectiveness of Ensitrelvir for the Treatment of COVID-19 in Japanese Clinical Practice: A Post-Marketing Surveillance (Interim Analysis)  Poster #537

 本演題では、日本の臨床現場におけるエンシトレビルの安全性と有効性を評価した新たな臨床データを発表します。現在日本で実施中の一般使用成績調査では3,000例の患者の登録が予定されており、2023年7月20日時点で計1,682例の患者が登録されました。そのうち安全性の解析対象として1,589例、有効性の解析対象として1,584例が評価されました。エンシトレビルの投与後、年齢や重症化リスク因子の有無にかかわらず、解熱までの時間の中央値は約1.5日、COVID-19の全症状の消失までの時間の中央値は約6.5日でした。COVID-19の悪化による死亡症例は確認されませんでした。また、エンシトレルビルの安全性や有効性に関する新たな懸念は確認されませんでした。

・  味覚・嗅覚症状への効果2

Ensitrelvir for the Treatment of COVID-19 Infection: Evaluation of Taste Disorder and Smell Disorder in the Phase 3 Part of the Phase 2/3 SCORPIO-SR Randomized Controlled Trial  Poster #549

 オミクロン株による感染者の約13%が味覚障害や嗅覚障害を経験しており、世界中で何百万人もの人々に影響を与えています3。QOLの低下に加え、COVID-19による味覚障害や嗅覚障害は何ヵ月も継続する可能性があると言われています4,5

 本演題では、COVID-19の症状発症から3日以内のエンシトレビルの投与により、味覚・嗅覚症状が抑制または改善された可能性があることを示す新たな臨床データを発表します。日本を中心にアジアで実施した第2/3相臨床試験(SCORPIO-SR Study)のPhase 3 partにおいて、エンシトレビル125mg群では、7日目に味覚障害あるいは嗅覚障害が見られた患者の割合はプラセボ群と比較して有意に少なかったことが確認されました。

<セフィデロコルに関する主な発表>

・  実臨床でのCOVID-19ではない入院患者におけるグラム陰性菌感染症に対するセフィデロコルの効果6

Real-World Use of Cefiderocol Treating Non-COVID Patients with Confirmed Gram-negative Infections in US Hospitals During January 2020 – June 2022  Poster #2753

 本演題では、米国における実臨床でのCOVID-19ではない入院患者におけるグラム陰性菌感染症に対するセフィデロコルの治療に関する後ろ向き観察研究のデータ(Premier Healthcare Database、2020年1月~2022年6月)を発表します。本データでは、グラム陰性菌感染が確認された後、3日以上連続してセフィデロコルが投与された患者は275例であり、その患者背景は以下の通りでした。
  • 約半数(53.1%)が集中治療室で治療を受けていた。
  • 半数以上(56.7%)が他の抗菌薬に耐性がある菌を保持していた。
  • 主な感染部位は、呼吸器(45.8%)、尿路(19.6%)、創傷(18.2%)、血液(16.4%)であった。
  • 主な併存疾患は、腎疾患(42.9%)、慢性肺疾患(36.7%)、糖尿病(34.9%)、うっ血性心不全(32.7%)であった。
  • 分離された主な菌は緑膿菌(48.7%)、アシネトバクター・バウマニ(23.6%)、クレブシエラ・ニューモニエ(14.2%)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(13.1%)であり、患者の3分の1以上(34.2%)が2種類以上の菌に感染していた。
  • ほとんどの患者(92%)が、セフィデロコルの投与前に他の抗菌薬が投与されていた。
 セフィデロコルを投与された患者における入院期間中の死亡に関する結果は以下の通りでした。
  • 入院期間中の全死因死亡率は16.4%であった。
  • 入院期間中の全死因死亡率は、グラム陰性菌を確認した検査から5日以内にセフィデロコルの治療が開始された患者(135例)で10.4%、6~20日以内に治療が開始された患者(108例)で19.4%、20日以上経過後に治療が開始された患者(32例)では31.3%であった。
 これらの結果から、セフィデロコルによる治療がグラム陰性菌感染症の治療に効果的であり、より早期にセフィデロコルによる治療を受けた患者は、入院期間中の全死因死亡率が低くなる可能性が示唆されました。
 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。エンシトレルビルおよびセフィデロコルの国内およびグローバル開発を推進し、さらなるエビデンスの集積に努めるとともに、各規制当局による審査等に迅速に対応してまいります。当社は、グローバルの課題であるCOVID-19やAMR(薬剤耐性)の対策を成功させ、人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。
以 上

【エンシトレルビル フマル酸について】

 COVID-19治療薬であるエンシトレルビルは、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、エンシトレルビルは3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。オミクロン株流行期に、重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無にかかわらず幅広い軽症/中等症患者を対象に実施した第2/3相臨床試験のPhase 3 partにおいて、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状に対する改善効果(主要評価項目)および抗ウイルス効果(主要な副次評価項目)が確認されています7,8。これらの結果に基づき、日本においては2022年11月に緊急承認されています9。米国においては、米国食品医薬品局(FDA)より開発の促進や審査の迅速化を目的とするファストトラック指定(Fast Track designation)を受領しています10。国内においては、6歳以上12歳未満の小児を対象とした第3相臨床試験11を開始しており、グローバルにおいては、入院を伴わないSARS-CoV-2感染患者を対象としたSCORPIO-HR試験12、入院患者を対象としたSTRIVE試験13、また、家庭内濃厚接触者を対象としたSCORPIO-PEP試験14が進行中です。

【セフィデロコルについて】

 セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬です。セフィデロコルは細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます。その結果、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害します。セフィデロコルは、欧米において承認を取得し、欧州においてはFetcroja®の製品名で、米国ではFetroja®の製品名でそれぞれ販売されています15, 16。日本および台湾においても承認申請を実施済みであり17, 18、現在規制当局による審査が行われています。WHOの必須医薬品リストにも掲載されており、また、多くの低中所得国、高中所得国で本新規抗菌薬を必要とする患者へのアクセスを改善するために、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(GARDP)およびClinton Health Access Initiative(CHAI)との3者連携契約19を通じて準備を進めています。

参考:

1.       Nakagawa N., et al. Safety and Effectiveness of Ensitrelvir for the Treatment of COVID-19 in Japanese Clinical Practice: A Post-Marketing Surveillance (Interim Analysis). IDWeek 2023. Poster #537

2.       Tsuge Y, et al. Ensitrelvir for the Treatment of COVID-19 Infection: Evaluation of Taste Disorder and Smell Disorder in the Phase 3 Part of the Phase 2/3 SCORPIO-SR Randomized Controlled Trial. IDWeek 2023. Poster #549

3.       Butowt R, Bilińska K, von Bartheld C. Why Does the Omicron Variant Largely Spare Olfactory Function? Implications for the Pathogenesis of Anosmia in Coronavirus Disease 2019. J. Infect. Dis. 2022:226 https://academic.oup.com/jid/article/226/8/1304/6573859.

4.       Coelho, D. H., et al. (2021). Quality of life and safety impact of COVID-19 associated smell and taste disturbances. American journal of otolaryngology, 42(4), 103001. https://doi.org/10.1016/j.amjoto.2021.103001

5.       Tan B K J, et al. Prognosis and persistence of smell and taste dysfunction in patients with covid-19: meta-analysis with parametric cure modelling of recovery curves BMJ 2022; 378 :e069503 doi:10.1136/bmj-2021-069503 Cai B, Zhou Y, Slover C, et al. Real-world use of cefiderocol treating non-COVID patients with confirmed Gram-negative infections in US hospital during January 2020-June 2022. Poster #2753 presented at ID Week2023. October 11 - 15, 2023. Boston, MA.

6.       Cai B, Zhou Y, Slover C, et al. Real-world use of cefiderocol treating non-COVID patients with confirmed Gram-negative infections in US hospital during January 2020-June 2022. Poster #2753 presented at ID Week2023. October 11 - 15, 2023. Boston, MA.

7.       プレスリリース:2022年9月28日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)の 第2/3相臨床試験 Phase 3 partにおける良好な結果について(速報)

8.       プレスリリース:2023年2月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の 早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について―国際学会CROI 2023において新規データを発表―

9.       プレスリリース:2022年11月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ®錠125mg」の緊急承認制度に基づく製造販売承認取得について

10.    プレスリリース:2023年4月4日
新型コロナウイルス感染症治療薬 エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg)について米国FDAよりファストトラック指定を受領

11.    プレスリリース:2023年6月29日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の国内第3相臨床試験開始について‐ 6歳以上12歳未満の小児を対象とした臨床試験を開始 ‐

12.    プレスリリース:2022年3月16日
塩野義製薬とACTGによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 S-217622のグローバル第3相臨床試験の実施について

13.    プレスリリース:2023年2月16日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の グローバル第3相臨床試験(STRIVE)開始について

14.    プレスリリース:2023年6月9日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸のグローバル第3相臨床試験開始について‐ COVID-19の発症抑制効果の検証を目的とした発症予防試験を開始 ‐

15.    FETCROJA SMPC. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/fetcroja-epar-product-information_en.pdf Last accessed March 2023

16.    Fetroja FDA prescribing information. Available at:
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2020/209445s002lbl.pdf(PDFファイル) Last accessed March 2023

17.    プレスリリース:2022年3月24日

セフィデロコルの国内における製造販売承認申請について

18.    プレスリリース:2022年12月13日

新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬セフィデロコルの台湾における新薬承認申請受理について

19.    プレスリリース:2022年6月15日

塩野義製薬、GARDP、CHAIによる細菌感染症治療薬セフィデロコルに関する ライセンス契約ならびに提携契約の締結について -135ヵ国でセフィデロコルへのアクセスを拡大-

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.