2025/01/17

米国BARDAからの抗ウイルス薬S-892216長期間持続型注射剤の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)曝露前予防に対する開発助成金の受領について

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する新たな抗ウイルス薬S-892216の開発において、長期間持続型注射剤による曝露前予防の開発支援として、生物医学先端研究開発局(BARDA)が資金提供するコンソーシアムである緊急対応パートナーシップ(RRPV)より、375百万ドル(約585億円*)の助成金を受領する契約を締結したことを、お知らせいたします。          * 1ドル=156円換算、契約締結時の為替レート水準

 

S-892216の開発に対する本助成は、COVID-19の重症化を抑制する曝露前予防のための薬剤開発を支援する重要な助成として、米国BARDAより選定されました。本助成は、米国保健福祉省(HHS)、事前準備・対応担当次官補局(ASPR)、BARDAによる連邦資金から提供されており、その他の取引番号(Other Transaction Number)は75A50123D00005です。本注射剤の開発については、2025年中に米国でのIND申請(Investigational New Drug Application)と第1相臨床試験の開始を予定しています。

 

 当社の上席執行役員R&D管掌のJohn Kellerは、次のように述べています。

「COVID-19は、ワクチンや治療薬が利用可能となった現在も、依然として公衆衛生上の重大な課題となっています。米国BARDAが、このアンメットニーズを満たす可能性のあるS-892216を助成の対象に選んでくださったことに心から感謝しています。今後、当社の有する抗ウイルス薬開発における専門性とCOVID-19に対する知見や継続的な取り組み、そしてBARDAからの支援を基に、S-892216のCOVID-19曝露前予防に対する開発を加速してまいります。」

 

 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めています。引き続き、社会の安心・安全の回復に貢献するとともに、新たな変異株の出現や今後の流行状況に合わせ、必要とされる治療薬や予防薬、ワクチン等を迅速に提供できるよう、COVID-19に対する研究開発を推進してまいります。

 

 なお、本件が2025年3月期の連結業績予想に与える影響に関しては、今後、状況に応じて精査いたします。

 

以 上

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.

 

 

【S-892216について】

S-892216は、塩野義製薬が創製した次世代3CLプロテアーゼ阻害剤です。COVID-19の治療および予防を目的として、長期間持続型注射剤と経口剤の2種類の製剤で開発が進行中です。長期間持続型注射剤は、2025年に第1相臨床試験を実施予定であり、経口剤は、国内第1相臨床試験を実施中です(jRCT:2031230082)。なお、S-892216の研究開発は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development: AMED)の課題番号21fk0108584h0001および22fk0108522h0001の支援を受けています。

 

 S-892216に加えて、当社はCOVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸のグローバル開発を進めています。日本では、2024年3月に通常承認1され、ゾコーバ®錠125mgとしてCOVID-19の治療に貢献しています。また米国では2023年に米国食品医薬品局からファストトラック指定を受けています2。さらにシンガポールにおいては、2023年11月にSAR**(Special Access Route)申請に基づいた輸入許可を受けたことにより、一部の施設において使用可能となっています3

**  SAR:未承認の治療薬を輸入・供給するためにシンガポールが独自に有する薬事システム、医療機関に所属する各医師からの申請が必要

 

 

【生物医学先端研究開発局(BARDA)について】

生物医学先端研究開発機構(BARDA)は、米国保健福祉省(HHS)の事前準備・対応担当次官補局(ASPR)の一部門であり、化学、生物、放射線、核(CBRN)の脅威や、パンデミックインフルエンザ(PI)や新興感染症(EID)の脅威から国を守るために設立されました。BARDA は、ワクチン、医薬品、診断薬などの医療対策の開発を支援し、FDA による承認や戦略的国家備蓄品に含めるための検討に向けて、研究から高度な開発まで取り組んでいます。S-892216の開発助成金は、BARDAによって資金提供されるコンソーシアムである、緊急対応パートナーシップ(RRPV)との契約に基づいています。

 

参考:

1.       プレスリリース:2024年3月5日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ®錠125mg」の日本における通常承認の取得について

2.       プレスリリース:2023年4月4日

新型コロナウイルス感染症治療薬 エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg)について米国FDAよりファストトラック指定を受領

3.       プレスリリース:2023年12月19日

シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の平安塩野義香港とJuniper社のサブライセンス契約の締結およびSAR承認取得について