2025/04/08

グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコルの良好な臨床効果を示す欧州地域におけるリアルワールドデータのESCMID Global 2025での発表について

・    欧州臨床微生物学感染症学会議(ESCMID Global 2025)において、セフィデロコルの欧州地域におけるリアルワールドデータを発表

・    世界保健機関(WHO)の最優先リストに分類されるグラム陰性菌に感染した、治療選択肢が限られた患者に対する良好な臨床効果を確認

・    他抗菌薬からセフィデロコルへの切り替えや追加による救済療法での投与と比べ、経験的または確定的治療として早期からセフィデロコルが投与された患者の臨床的治癒率の方が高い傾向

 

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコル(製品名:日本「フェトロージャ®」、米国・台湾「Fetroja®」、欧州「Fetcroja®」)の欧州地域におけるリアルワールドデータ(以下「本研究」)を、2025年4月11日からオーストリアのウィーンで開催される第35回欧州臨床微生物学感染症学会(ESCMID Global 2025)において発表することをお知らせします。

 

 このたび発表するのは、セフィデロコルの国際的後ろ向き観察研究であるPROVE研究1から得られた、欧州地域におけるリアルワールドデータです2。本研究では、イギリス・フランス・スペイン・イタリア・ドイツの欧州5ヶ国において、グラム陰性菌感染症と診断され、72時間以上連続してセフィデロコルが投与された患者のデータを解析しました。

 

 本研究において、セフィデロコルを投与された567例の患者背景は以下の通りでした。

・   登録患者の70%以上がカルバペネム耐性菌に感染していました。また、55.9%が集中治療室(ICU)で重篤な状態にあり、41.3%が人工呼吸器など生命維持のための臓器機能補助を受けていました。

・   最も多く報告された感染症は呼吸器感染症で全体の50%以上(229名)を占め、次いで尿路感染症が12%(73名)でした。

・   世界保健機関(WHO)の最優先リストに分類されるグラム陰性菌3が主な病原体として検出されました。(Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)41.3%、Acinetobacter baumannii、15.0%、Enterobacterales、14.6%)

 

 本研究の解析の結果、セフィデロコルによる治療の全体的な臨床的治癒率は65.3%で、良好な臨床効果が確認されました。また、他抗菌薬からの切り替えや追加による救済療法*としてセフィデロコルが投与された場合の臨床的治癒率(58.2%)と比べ、経験的治療**または確定的治療***として早期からセフィデロコルが投与された場合の臨床的治癒率(64.6%、67.4%)の方が高い傾向が示され4、薬剤耐性菌による感染症が疑われる患者へのセフィデロコルの早期かつ適切な使用に対する新たなエビデンスが示されました。

*救済療法                  :標準的な治療が効果不十分または無効だった後に、代替的に治療すること

**経験的治療             :病原微生物を同定する前に、経験的な知見から治療を開始すること

***確定的治療           :細菌培養検査や感受性試験の結果を受けて治療を開始すること

 

 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つとして「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。当社は、グローバルの課題であるCOVID-19や薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)の対策の成功に向けさらなるエビデンスの集積に努めるとともに、人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を世界中の患者さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。

以 上

 

【セフィデロコルについて】

 セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する、新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬です。セフィデロコルは、細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生による薬剤の細菌細胞外への排出)による影響を受けにくい特徴を有します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し細菌内に能動的に運ばれることで、細菌の細胞壁合成を阻害します。セフィデロコルは、多くの低中所得国、高中所得国で本新規抗菌薬を必要とする患者へのアクセスを改善するために、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(GARDP)およびClinton Health Access Initiative(CHAI)との3者連携契約を通じた準備も進めています5

 

【薬剤耐性(AMR)について】

 薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)は、抗菌薬に対する細菌の耐性獲得により抗菌薬が効きにくくなることです。AMRは「サイレントパンデミック」と呼ばれ、人類が直面する世界的な公衆衛生上の脅威のひとつであり、緊急に対処が必要な世界規模の重要課題です6。2019年には、AMRにより世界中で127万人が死亡したと推定されています7。また、国際的な連携により対策を講じなければ、2050年までに年間1,000万人以上が命を落とす問題に発展し、世界経済に与えるインパクトは累積で100兆米ドルに及ぶとの予測がなされています8

当社のAMRに対する取り組みついては、こちらをご覧ください。

 

参考

1.      プレスリリース(2024/10/17)米国感染症学会週間(IDWeek 2024)における セフィデロコルの良好な臨床効果を示すリアルエビデンスデータの発表について

2.      Asensio Martin JM et al. Cefiderocol treatment in patients with Gram-negative bacterial infections: European results of the global retrospective observational PROVE study. Abstract. ESCMID 2025.

3.      World Health Organization. WHO updates list of drug-resistant bacteria most threatening to human health. Available at: WHO updates list of drug-resistant bacteria most threatening to human health. Accessed: March 2025.

4.      Asensio Martin JM et al. Cefiderocol treatment in patients with Gram-negative bacterial infections: European results of the global retrospective observational PROVE study. Poster 2542. ESCMID 2025.

5.      プレスリリース(2022/6/15)塩野義製薬、GARDP、CHAIによる細菌感染症治療薬セフィデロコルに関する ライセンス契約ならびに提携契約の締結について -135ヵ国でセフィデロコルへのアクセスを拡大-

6.      Antimicrobial resistance (who.int) WHO. Antimicrobial resistance. Who.int. Published October 13, 2020.

7.      Antimicrobial Resistance Collaborators. Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis. Lancet 2022; 399: 629–55

8.     160525_Final paper_with cover.pdf (amr-review.org)

O’Neill J. ‘Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations’. Review on Antimicrobial Resistance. May 2016.

 

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