・ゾフルーザによる治療により、家庭内におけるインフルエンザウイルスの伝播リスクが、プラセボに対して32%減少1
・治療に使用される抗ウイルス薬が同居家族へのウイルスの伝播抑制を示した世界初の臨床試験結果1
・家庭内でのインフルエンザウイルスの感染拡大を抑制することで、公衆衛生の改善に寄与し、インフルエンザによる医療体制に対する負担の軽減に貢献する可能性2, 3
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ(一般名:バロキサビル マルボキシル、以下「ゾフルーザ」)のグローバル第III相臨床試験(伝播抑制試験:CENTERSTONE試験)の良好な結果が、「The New England Journal of Medicine」に掲載されたことをお知らせいたします。
なお、提携先であるF. Hoffmann-La Roche Ltd.(本社:スイス バーゼル、CEO: Dr. Thomas Schinecker、以下「Rocheグループ」)も本内容を発表しています。
CENTERSTONE試験は、インフルエンザと診断された患者とその同居家族または共同生活者を対象に、「ゾフルーザの1回経口投与による家庭内でのインフルエンザウイルスの伝播抑制効果」の検証を目的に実施されました。本試験は、日本を含むグローバルで実施され、4,000例を越える患者が登録されました。
主要評価項目である「インフルエンザ患者が被験薬を服用後、5日以内にインフルエンザ陽性と判定された同居家族または共同生活者の割合」について、ゾフルーザ群で9.5%、プラセボ群で13.4%であり、ゾフルーザ群はプラセボ群に対して、インフルエンザ陽性判定された同居家族または共同生活者の割合を統計学的に有意に32%減少させ、主要評価項目を達成しました(p=0.013)。この結果より、インフルエンザ患者に対するゾフルーザの1回経口投与は、体内のウイルス量を大きく減少させることにより、同居家族または共同生活者のインフルエンザウイルス感染リスクを有意に減少させることが示されました。
また、主要な副次評価項目である「インフルエンザ患者が被験薬を服用後、5日以内にインフルエンザ陽性と判定され、インフルエンザ症状を発症した同居家族または共同生活者の割合」について、ゾフルーザ群で5.8%、プラセボ群で7.6%であり、ゾフルーザ群はプラセボ群に対して、陽性判定されインフルエンザ症状を発症した同居家族または共同生活者の割合を25%減少させました(p=0.155)。さらに、ゾフルーザの忍容性は良好で、安全性面での新たな懸念は確認されませんでした。
本試験は、呼吸器感染症において治療に使用される抗ウイルス薬がウイルス伝播抑制を示した世界初の臨床試験であり、その結果は米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)を含む規制当局に提出済です。
インフルエンザは、特にインフルエンザ関連の合併症のリスクが高い人々にとって、健康と経済の両面で大きな負担をもたらしています2, 3。毎年、世界中で約10億人が季節性インフルエンザウイルスに感染し、何百万人もの患者が入院し、最大約65万人の死者を出しています2, 3。
インフルエンザウイルス感染の約3分の1は家庭内で生じると言われています4。また、多くの労働者は、自身か家庭内でインフルエンザウイルスに感染した場合、約2日欠勤するとともに、自身が症状を示していても仕事に出勤すると報告しています5。パンデミックが発生した場合、インフルエンザは医療体制に大きな影響を与える可能性があります6, 7。冬季だけでなく年間を通じて、COVID-19を含む様々なウイルス性呼吸器感染症が流行しており、インフルエンザウイルスの感染拡大を防ぐ効果的な手段を有することはこれまで以上に重要となっています6, 7。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つとして「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。引き続き、Rocheグループと連携し、本薬の有効性、安全性に関するデータの収集と解析に鋭意取り組み、適正使用に向けた情報提供活動に努めてまいります。
以 上
【CENTERSTONE試験について】
CENTERSTONE試験 [NCT03969212] [jRCT2080224894] は、インフルエンザと診断された患者とその同居家族または共同生活者を対象に、「ゾフルーザの1回経口投与による家庭内でのインフルエンザウイルスの伝播抑制効果」の検証を目的に実施された、グローバル第III相臨床試験です。本試験は、世界272カ所の施設で実施され、4,000人以上が参加しました。主要評価項目は、「インフルエンザ患者が被験薬を服用後、5日以内にインフルエンザ陽性と判定された同居家族または共同生活者の割合」でした。このランダム化プラセボ対照試験は、米国FDAおよびインフルエンザの専門家の見解をもとにデザインされました。本試験は、米国保健福祉省(HHS)、事前準備・対応担当次官補局(ASPR)、生物医学先端研究開発局(BARDA)による連邦資金から提供されており、その他の取引番号(Other Transaction Agreement number)はHHSO100201800036Cです。
【ゾフルーザについて】
塩野義製薬が創製したゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制し、1回の経口投与で効果を発揮します8。ゾフルーザは非臨床試験において、オセルタミビルに耐性を示すウイルスおよび、鳥インフルエンザウイルス(H7N9、H5N1)を含むインフルエンザウイルスに抗ウイルス効果を示しました9, 10。本薬の開発および販売は、Rocheグループとの提携下で進めており、日本と台湾における販売は塩野義製薬が、それ以外の国ではRocheグループが行っています。日米を含め75ヵ国以上でインフルエンザ治療薬として承認されています。日本においては、成人および小児に対する「A型またはB型インフルエンザの治療および予防」を効能・効果として販売されています。
参考:
1. Monto, AS. et al. Efficacy of Baloxavir Treatment in Preventing Transmission of Influenza. New England Journal of Medicine [Internet; cited April 2025]
2. ECDC. Factsheet about seasonal influenza. [Internet; cited April 2025]. Available from: https://www.ecdc.europa.eu/en/seasonal-influenza/facts/factsheet.
3. World Health Organization (WHO). Influenza (Seasonal). [Internet; cited April 2025]. Available from: http://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal).
4. Klick .B et al. Optimal design of studies of influenza transmission in households. I: Case-ascertained studies. 2011 Epidemiology and Infection, 140(1), pp. 106–114.
5. Blanchet Zumofen, M.-H., et al. Impact of influenza and influenza-like illness on work productivity outcomes: A systematic literature review. 2022, PharmacoEconomics, 41(3), pp. 253–273.
6. WHO. Joint Statement - Influenza season epidemic kicks off early in Europe as concerns over RSV rise and COVID-19 is Still a Threat. [Internet; cited April 2025]. Available from: https://www.who.int/europe/news/item/01-12-2022-joint-statement---influenza-season-epidemic-kicks-off-early-in-europe-as-concerns-over-rsv-rise-and-covid-19-is-still-a-threat.
7. WHO. Global Influenza Strategy 2019-2030. [Internet; cited April 2025]. Available from: https://www.who.int/publications/i/item/9789241515320.
8. Hayden FG, et al. N Engl J Med 2018;379:913–923.
9. Noshi T, et al. Antiviral Res. 2018;160:109-117.
10. Taniguchi K, et al. Sci Rep. 2019;9:3466.
[お問合せ先]
塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.