2025/05/09

Cilcare社との難聴に関する共同研究契約の締結について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、CILCARE SAS(本社:フランス モンペリエ、CEO:Celia BELLINE、以下「Cilcare社」)との間で、難聴に関する新薬創出を目的とした共同研究契約を締結しましたので、お知らせいたします。

 

難聴は、世界中で約5億人が罹患している深刻な健康問題です。その発生率は大幅に増加しており、2050年までに世界人口の4分の1が、さまざまな聴覚障害を経験すると言われています1,2。さらに、難聴は認知症発症の最大のリスク因子であり、難聴を取り除くことで、認知症の発症リスクを減少させることが報告されています3。しかし、現時点では、詳細な病態メカニズムは不明で有効な治療薬がないため、アンメットニーズが高い疾患です4,5。その中で、Cilcare社は難聴に対する高い非臨床研究技術と臨床ノウハウを有している世界有数の企業であり、当社とのオプション契約のもと、難聴に対する治療薬候補(CIL001、CIL003)の開発を進めています6,7

 

本共同研究では、塩野義製薬の創薬力とCilcare社の難聴研究の専門性を融合させ、難聴における新規メカニズムの新薬創出を行ってまいります。また、Cilcare社が有する難聴の非臨床評価技術を当社に移管することで、両社による共同研究を加速させ、早期に開発品を創製することが可能になります。さらに、今後の継続した開発候補品の創出に向けて、Cilcare社が有する臨床試験データを活用することで、難聴に対する臨床外挿性の精度を高める非臨床ケイパビリティの獲得を目指します。

 

塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「健やかで豊かな人生への貢献」を特定し、誰もがより長く、そして自分らしく、いきいきとした生活を送ることができる社会の実現に向け、取り組みを進めています。難聴を含む、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する画期的な治療薬を、患者さまにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。

 

以 上

 

 

 

【Cilcare社(シルケア社)について】

Cilcare社は、聴覚科学に特化したバイオテクノロジー企業であり、聴覚障害および関連疾患の特性評価、診断、および治療のための最先端のソリューションを開発しています。2014年の創設以来、Cilcareは、先進的な研究開発プラットフォーム、有望な薬剤候補のポートフォリオ、およびさまざまな形態の聴覚障害を特性評価するための人工知能と機械学習の使用を組み合わせることで、これらの世界的な課題に取り組んできました。過去10年間、Cilcareはその技術をヨーロッパ、アメリカ、アジアの業界リーダーや研究者に提供し、聴覚障害のための薬物、遺伝子および細胞治療、医療機器の開発を加速させてきました。

詳細についてはこちらをご覧ください

 

【CIL001について】

CIL001は2020年にCilcare社が導入した、聴覚神経保護作用を有する新規の難聴治療薬候補です。これまでの非臨床試験において、CIL001は聴性脳幹反応(ABR: auditory brainstem response) 第Ⅰ波の振幅を改善し、内耳感覚細胞を聴神経につなぐ蝸牛シナプスの再結合を促進することで難聴を改善する効果が確認されています。塩野義製薬が、全世界における、開発・製造・商業化の独占的なライセンスを獲得するためのオプション契約を有しています3

 

【難聴について】

世界中で、難聴の発生率が大幅に急増している原因は、世界人口の増加と高齢者割合の増加が挙げられます。このまま増加が進むと、医療保険に対するコストが上昇し、社会的孤立や貧困の増加を伴い、生産性の低下という形で社会全体にとっても大きな損失となります。また、難聴の傾向として、徐々に聴力が低下するため、患者自身が自覚しにくく、診断率が低いことが問題として挙げられています。難聴になると他者とのコミュニケーションなど、さまざまな社会生活に支障をきたすことが知られているとともに、中枢神経疾患のリスクファクターの1つにもなっています。

1.      Hearing Loss Disease Treatment Market Size & Growth to 2028 (kbvresearch.com)

2.      Haile LM, Kamenov K, Briant PS, Orji AU, Steinmetz JD, Abdoli A, et al. Hearing loss prevalence and years lived with disability, 1990–2019: findings from the Global Burden of Disease Study 2019. Lancet. 2021.

3.      Livingston G. et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024; 404: 572-628.

4.      McDaid D et al. Estimating the global costs of hearing loss Int J Audiol. 2021; 60: 162-170.

5.      Shearer AE, Smith RJH. Genetic hearing loss. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024.

6.      難聴に対する開発化合物に関するCilcare社とのオプション契約締結について

7.      R&D Day 2024

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム: お問い合わせ | 塩野義製薬 (shionogi.com)