2025/10/23

抗HIV薬DovatoのPASO DOBLE試験に関するViiV社の発表について

・  DovatoはBiktarvyと比較して、同等の抗ウイルス効果を示し、非劣性を示した

・  DovatoはBiktarvyと比較して、体重増加が統計学的に有意に少なく、薬剤関連の有害事象も少なかった

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、GlaxoSmithKline plc.および Pfizer Inc.とともに当社が資本参加している ViiV Healthcare Ltd.(以下「ViiV社」)が、HIV-1の維持療法においてDovato(ドルテグラビル/ラミブジン)とBiktarvy(ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビル)の有効性と安全性を直接比較したPASO DOBLE試験の結果を、第20回欧州エイズ会議(EACS)にて発表しましたので、お知らせいたします。

 

 PASO DOBLE試験は、ウイルス抑制が維持されているHIV-1感染者553名を対象に、2剤レジメンのDovato(n=277)と3剤レジメンのBiktarvy(n=276)を比較した第4相多施設共同無作為化臨床試験です。本試験では、ウイルス抑制が達成されたHIV感染者の治療をDovatoまたはBiktarvyに切り替え、主要評価項目として、96週間の服用後のウイルス量の抑制を評価しています。また、主要な副次評価項目として体重の変化や安全性を評価しています。

 

 Dovato群は96週間後のウイルス量の抑制効果に関して、Biktarvy群に対して非劣勢を示し、主要評価項目を達成しました。また、治療開始後96週目までに、Biktarvy群では3例のウイルス学的失敗が確認されましたが、Dovato群では確認されませんでした。いずれの失敗例においても耐性ウイルスの出現は認められませんでした。Dovato群はBiktarvy群と比較して、体重増加の副作用が統計学的に有意に少なく、薬剤関連の有害事象も少ないことが確認されました。

 

•         96週時点で、Dovato群はBiktarvy群に対してウイルス抑制維持において非劣性を示した。(リスク差:-0.7%、95%信頼区間:-2.1~0.7)

•         体重増加は、Biktarvy群で平均2.35kg、Dovato群で0.84kgと、Dovato群の方が有意に少なかった。(差:1.52kg、95%信頼区間:0.74~2.29)

•         体重が5%以上増加した被験者の割合は、Biktarvy群で34.8%、Dovato群で20.1%であった。(調整オッズ比:2.05、95%信頼区間:1.37–3.07)

•         薬剤関連の有害事象は、Dovato群で7.6%、Biktarvy群で13.4%と、Dovato群の方が少なかった。(p=0.025)

 

 

 HIV治療はウイルス抑制だけでなく、HIVと共に生きる人々のQOLや長期的な健康維持も重要です。本試験において、Dovato群ではBiktarvy群と比較して有意に体重増加が抑制されること、また薬剤関連有害事象の頻度も低いことが明らかとなりました。これにより、Dovatoは長期的な健康管理の観点からも有望な治療選択肢であることが示されました。

 

 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つとして「感染症の脅威からの解放」を特定し、HIV感染症をはじめとする三大感染症への取り組みを推進しております。今後も、60年以上におよぶ感染症領域における研究・開発で培ったノウハウを活用し、ViiV社と連携して事業を推進することで、HIV感染症治療と予防の両面でグローバルヘルスへの貢献を果たしてまいります。

 

以 上

 

 

PASO DOBLE試験について

 PASO DOBLE(NCT04884139)は、スペイン国内30施設で実施された第4相多施設共同無作為化臨床試験です。1日1錠以上、ブースター剤、エファビレンツやTDFなど累積毒性のある薬剤を含む治療を受けているウイルス抑制維持中のHIV-1感染者が対象で、DovatoまたはBiktarvyへの切り替えが1:1で無作為化されました。主要評価項目は96週時点でのウイルス抑制維持(HIV-1 RNA 50コピー/mL以上の割合、FDAスナップショット法、非劣性マージン4%)です。副次評価項目には体重増加量、BMI変化、体重5%以上増加した被験者の割合などが含まれます。48週間時点のデータにおいても、良好な結果が得られていました1

 

Dovato (ドルテグラビル/ラミブジン)について

 Dovato(日本での製品名:ドウベイト®)は、ドルテグラビル(DTG)50mgとラミブジン(3TC)300mgの1日1回投与の2剤レジメン配合剤です。 抗レトロウイルス治療歴がない、または、抗レトロウイルス療法によりウイルス抑制が維持され、DTGおよび3TCのいずれに対する薬剤耐性も認められない、HIV-1成人感染患者の治療を適応として承認されています。

 Dovatoは、2剤でDTGベースの3剤レジメンと同様、2つの異なる部位でウイルスサイクルを阻害します。DTGのようなインテグラーゼ阻害剤は、ウイルスDNAがヒト免疫細胞(T細胞)の遺伝物質に組込みを阻害することにより、HIV複製を阻害します。このステップは、HIV複製サイクルにおいて必須であり、慢性感染の確立に関与します。3TCは、ウイルスRNAのDNAへの変換を阻害し、ウイルスの増殖を停止させる核酸系逆転写酵素阻害剤です。

 

参考:

1.       プレスリリース: 2024年7月25日

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.