信頼するメンバーと目指す優勝。チームワークこそがソフトボールの魅力

2025年4月8日公開
2024年、新キャプテンとしてチームをまとめ上げた小林美沙紀選手。高い目標を数値化し、チーム全員で共有して達成に結びつけてきました。「練習も試合も常に全力タイプ」と自他共に認める小林選手は、諦めないプレー姿勢でチームを引っ張ります。さらなる高みを目指すために常に考え続ける姿を知ると、きっと誰もが応援したくなるでしょう。
突然のキャプテン指名―背番号10を背負うと決めた日
―2024年はキャプテンに就任され、チームをまとめる年になりました。

松田監督から突然キャプテンに指名されて「なんで私?!」と本当に驚きました。これまでのソフトボール人生でキャプテン経験は一度もなく、チームをまとめられるか、自分のプレーに集中できるか心配でした。
けれども、監督に「キャプテンにもいろんなタイプがいる。引っ張る人もいれば支えてもらう人もいるから」と説得されて。チームメイトを見渡してみると、きっと私を支えてくれる人たちだ、と心から思えたのでキャプテンを引き受ける覚悟ができました。チームメイトに助けてもらいながら、楽しい1年を過ごしました。
―キャプテンの楽しさとは?
関係各所へご挨拶する中でいろんな方と出会い、思っていた以上に多くの方が応援してくださっていることも知り、ソフトボールの世界が一層広がりました。
―キャプテンとしてのプレッシャーには、どのように対応されたのでしょう。
―では、プレーヤーとしての姿をおうかがいします。小林選手は外野手(センター)ですが、どのようなタイプの選手だと自己分析されていますか?
―入団1年目で達成されたシーズン17盗塁というリーグ記録は、現在も破られていませんね。
盗塁*ってすごく面白いんです!盗塁では全身の感覚を研ぎ澄ませて瞬時に微妙なタイミングや相手の隙を見極めることが求められます。タイミングを逸したらバッターと私の両方がアウトになってしまうので、チームメンバーとの連携が欠かせません。サインやアイコンタクトなど、言葉以外のコミュニケーションを駆使して、バッターに盗塁の意図を伝えます。そして、ゲーム状況や敵チームが自分を意識していないと判断したらすかさず走ります。
*盗塁について:ソフトボールでは投手の手から球が離れるまで、走者が塁を離れることは禁止です。野球のようにリードが取れないため、ソフトボールでの盗塁は非常に難易度が高いといわれています。

多様なメンバーによるチームプレーこそがソフトボールの魅力
―小林キャプテンの思う、ソフトボールの魅力は何でしょう?

最大の魅力は、仲間と気持ちを一つにして戦うチームプレーにあります。SHIONOGIレインボーストークスは特にチームワークの良さが光るチームです。
選手にはいろいろなタイプがいて、この多様性こそがチームの強みです。試合後に松田監督が各選手の評価を全体にフィードバックしてくださり、全員が各選手の役割や強みを共有しています。チーム内での自分の役割を常に考えながら練習することで、同じ練習をしても個々の能力が向上し、チーム全体が成長します。
―良いチームに必要なものとは?
信頼関係です。改善すべきプレーはオブラートに包まず明確に伝えます。私も含め、指摘されて気づけることはたくさんあります。だから、言うべきことをきちんと言えて、耳の痛いことも聞ける信頼関係が不可欠です。厳しい叱責(しっせき)や欠点の指摘ではなく、良いところが伸びるようなアドバイスを心がけています。
スタッフとの信頼関係も重要です。私は肩を痛めることが多くて、トレーナーさんとケアについてよく相談しています。トレーナーさんを信頼しているから、困りごとをストレートに伝えられます。
田房トレーナー「身体と心はつながっていますから、悩みを話すことは身体のためにも大切です」

自分の弱さから目を背けず、チームでの役割を考え抜く
―ソフトボールを始めたきっかけは?
小学校1年生のとき、2歳上の姉が先に地元群馬のソフトボールチームに入り、遊び相手ほしさに姉を追いかけて入団しました。結果、休日はすべてソフトボールに捧げる生活になり「みんな遊んでいるのに自分は遊べない」と不満に思うことも少なくありませんでした。
その後、中学校で出会った顧問の先生のおかげで、改めてソフトボールをがんばろうと思えるようになります。その先生は、ソフトボールを始めたばかりの初心者から、私たちのような経験者まで、一人ひとりの能力を伸ばすことに長けている方でした。個々のメンバーが成長できるようにさまざまなトレーニング法を考えてくれて、最初ボールを怖がっていた人でも上手に捕球できるようになり、チーム全体の戦力がアップしていくのを体感できました。
―地元の強豪・太田市立太田高校を経て、スポーツの名門・山梨学院大学への進学を選ばれました。 小学校から高校まではピッチャーで、大学では外野手に転向されたとうかがいました。
高校から大学に上がるタイミングでボールの素材がゴムから革へ移行するという、ピッチャーにとって大きな変化があるのです。革ボールはそれほど得意でなく、ピッチャーの人数も多い。もし登板できたとしてもDH*制のため打席に立てません。俊足を生かせるバッティングも好きだったので、監督と相談して外野手への転向を決意しました。
*DH:指名打者(DESIGNATED HITTER)、ピッチャーの代わりに打席に立つバッター。DHを採用するとピッチャーは打席に立てません。
―そのような理由があったのですね。外野手への転向を決断するのは大変だったのではないでしょうか。
―これまでのお話しをうかがって、ソフトボールに本気で向き合ってこられた姿が目に浮かびました。
―オフシーズンは、お仕事と練習を両立されています。どのような業務を担当されていますか。
シオノギファーマの製造(薬を包装する部署)で働いています。初めは薬が流れてくるスピードに酔ってしまいましたが、集中して作業に取り組むのが好きなので今は楽しく働いています。「この方法だともっと効率がいいかも」と、ソフトボール練習中のように改善策を考えてしまいます(笑)。
以前、「薬の包装は裏方の仕事。けれども、この仕事で救われる命が絶対ある。誇りを持ってね」と先輩からかけられた言葉が心に残っています。最後方を守る外野手の仕事にも似ていますよね。
日本一という高い目標を達成する秘策は「数値目標の共有」
―今年もキャプテン続投ですね!今シーズンの目標と、それを達成するためのプランをお聞かせください。

チームの目標は日本一です!プレーオフは通過点と考え、まずはレギュラーシーズンで3位以上を目指します。去年は打線がつながらず、得点に結びつかない試合が多かったので、今年は1試合あたり4点以上の得点と、2点以内の失点という具体的な数値目標を設定しました。
目に見える数字で目標を意識すると、結果は変わります。松田監督の就任時からの方針で、望んだ結果が毎年きちんと出たので「見える化」の重要性がチーム全員にも浸透しました。
―小林選手個人の目標を教えてください。
