SHIONOGIは、世界中の人々の健康の維持増進と快適な生活の実現に貢献する企業として、より良いヘルスケアの未来を創り出し、患者さまや医師をはじめとする医療関係者の皆さま、株主や投資家の皆さま、ならびに社会全体の課題解決に貢献いたします。

近年は、ビジネスのグローバル化に伴うサプライチェーンの拡大により、人権課題の深刻化とその対応への要求が高まってきています。SHIONOGIは、中期経営計画(STS2030 Revision)でより一層グローバルに事業を展開していく姿勢を明確にしており、企業が当然果たすべき責務としてのみならず、経営戦略の実現にあたっても人権の尊重が重要であると認識し、取り組みを進めています。

人権リスクの防止・低減を進めるため、人権に関する外部専門家※1の協力を得ながら、グローバルな人権課題を特定し、人権デューディリジェンス体制の構築に向けた取り組みを進めていきます。

 

※1 経済人コー円卓会議日本委員会(ビジネスを通じて社会をより自由かつ公正で透明なものとすることを目的としたビジネスリーダーのグローバルネットワーク)

人権方針

  • SHIONOGIグループ人権ポリシー

    SHIONOGIは、何よりもまず人権尊重が重要であると理解しており、2011年6月に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)に基づき、各種国際規範を尊重した「SHIONOGIグループ人権ポリシー」を2021年3月22日に制定いたしました。

  • 重要な人権課題

    SHIONOGIは、重要な人権課題として以下を認識しています。なお、今後のリスクアセスメント結果によって、見直される可能性があります。

     

    差別禁止の徹底

    雇用および職場におけるあらゆる差別を行いません。またハラスメントについて社内相談・通報窓口を設置し、窓口担当者および従業員に対するハラスメント教育を行い早期発見及び防止に努めます。

     

    児童労働、強制労働の禁止

    児童労働、強制労働、奴隷労働、人身売買および人の尊厳と敬意の保持に反するいかなる行為も許容しません。

     

    労働者の基本的権利の尊重

    結社の自由の保障ならびに労働者の団結権および団体交渉権を尊重し、現地法を順守します。

     

    安全かつ健全な労働条件の提供

    安全かつ衛生的で快適な職場環境を確保し、適切な賃金支払いや労働時間の管理を行います。相談窓口を設置し、過重労働の未然防止に努めます。

     

    ダイバーシティの向上

    人種・宗教・国籍・性別・性的指向・性自認・障害などを問わず成長して活躍できるよう、価値観の多様性を尊重し、ダイバーシティの向上に努めます。

     

    コンプライアンスの徹底

    「SHIONOGIグループコンプライアンスポリシー」に則り、事業活動における法令順守と倫理的行動を確保するため、SHIONOGIグループすべての役員、従業員のコンプライアンスの徹底に努めます。

     

  • 現代奴隷法への対応

    英国で施行されたModern Slavery Act 2015に基づき、SHIONOGIグループの取り組みを声明として開示しています。

  • 人権デューディリジェンス

    SHIONOGIは、UNGPsに基づき以下のプロセスで人権デューディリジェンスを実施しています。

人権デューディリジェンスの全体像を示しています。
  • 人権リスクアセスメント

    SHIONOGIでは、ビジネスを通じて影響を与えうる主なライツホルダーとして、「従業員」「患者」「被験者」「消費者」「医療従事者」「サプライヤー」「市民社会」「政府」を認識しています。また、各種人権リスクガイドよりSHIONOGIに関係するグローバルでのリスクを下表の30項目に分類し、ライツホルダーとの関係を整理した上で、NGO・人権専門家とのエンゲージメントを実施、社内の関連部署からの実務上の人権リスクの聞き取りを行うことでリスクの精緻化を進めました。

分類したリスク30項目

  • 臨床試験の安全性
  • 医療へのアクセス
  • 適正な価格
  • 開発費・開発リスク
  • 医薬品の安全性・副作用・健康被害
  • 偽造医薬品の防止
  • 患者への十分で適切な説明(透明性)
  • 医薬品・医療品の不適切な廃棄
  • エシカル・マーケティング
  • 健康転帰への貢献
  • 公衆衛生・パンデミック対応
  • 人材確保・人材開発
  • サプライチェーンマネジメント
  • 企業倫理・法令遵守
  • プライバシー・個人情報保護
  • 腐敗防止
  • 政府との関係
  • 強制労働
  • 移民労働者
  • 児童労働
  • 差別・機会均等
  • 適正賃金
  • 労働時間
  • 結社の自由
  • 労働安全衛生
  • 苦情処理メカニズム
  • 環境負荷低減・環境影響
  • 有害物質・化学物質管理
  • 天然資源の利用
  • コミュニティ支援(社会貢献活動)

その上で、社会に与える影響、自社ビジネスとの関係をふまえ、項目ごとにより具体的な実務上のリスクを検討した結果、「原材料・素材の製造地域における労働状況」「外国人労働者の労働状況」についてのリスク把握に課題を認めたため、2021年度より精緻にリスクを把握するための具体的な活動を実施しています。

人権リスクアセスメントのステップを示しています。

2022年度は特定したリスクへの取り組みに注力し、リスクの見直しは実施しておりませんが、社外からの声を取り入れるため、ニッポンCSRコンソーシアム主催のステークホルダー・エンゲージメントプログラム※2に参画し、NGO/NPOなどの市民社会の方々とのエンゲージメントを通じて「業界毎に重要な人権課題」について検討しました。新たに当社のリスク表に反映するものは特定されませんでしたが、引き続き社外からの声も取り入れつつ必要に応じてリスクの見直しも検討していきます。

※2 ステークホルダー・エンゲージメントプログラム | 経済人コー円卓会議日本委員会 (crt-japan.jp)(外部サイト)

 

  • 人権インパクトアセスメント

    ● 原材料・素材の製造地域における労働状況

    重要4品目(セルロース・ガラス・エタノール・アルミニウム)

    PSCI※3のレポートおよびCRT日本委員会によるデスクトップ調査などから、汎用されるセルロース・ガラス・エタノール・アルミニウムを重要品目と設定し、人権リスク評価を実施しています。これらの重要品目については1次サプライヤーとの面談によるコミュニケーションを通じて人権リスクの把握を進めています。調査方法、進捗については外部専門家の評価を受けており、原材料・素材の調達地域を含めたサプライチェーン全体の人権リスク把握にむけ、1次サプライヤーを通じたコミュニケーションを継続するとともに、状況を注視していきます。負の影響が顕在化した際には外部専門家と連携し、対処・救済を実行します。

    ※3 Pharmaceutical Supply Chain Initiative

重要4品目フロー
  • マレーシアのゴム手袋製造における強制労働

    2022年8月19日に、CRT日本委員会よりマレーシアのゴム手袋製造における強制労働に関する情報を受け、ゴム手袋購入元の1次サプライヤーへのアンケート調査を行い、自グループ内の状況を調査しました。

    情報入手:外部専門家よりマレーシアのゴム手袋製造における強制労働および当該製造企業の主要な取引先2社への訴訟に発展している旨の情報入手(2022/8)

    調査開始:自グループ内のゴム手袋の使用状況および直接の購入先を通じての事実確認のアンケート調査(2022/8)

    ・過去に購入歴のある1製品が当該企業の製造にあたることが判明、ただしその後の継続購入は認められず(2022/9)

    外部専門家への報告:外部専門家と面談の上、該当製品の購入があった旨を報告、調査時点での購入、使用がないことから問題がない旨を確認(2022/10)

    調査完了:すべての直接購入先より回答を得、確認できた範囲で当該企業製造のゴム手袋について確認時点での購入がないことを確認(2022/10)

    該当製品の過去の購入実績はありましたが、問題認識時点で購入、使用をしていないことが確認できました。しかしながら当該企業における強制労働の改善状況は引き続き注視していきます。

ゴム手袋フロー
  • ●  外国人労働者の労働状況

    日本における技能実習生の問題を受け、自グループ内の調査およびCOVID-19の治療薬と予防ワクチンの主要なサプライヤーへのアンケート調査を行い、いずれも技能実習生の受け入れがないことが確認できました。結果については外部専門家から評価を受け、その助言に基づき、COVID-19の治療薬と予防ワクチンは自グループの影響が大きいことから、調査範囲を拡大し委託先も含めた調査を検討します。

外国人労働者フロー
取り組み 2021年度の結果 残された課題 2022年度の活動 2022年度の進捗

【原材料・素材の製造地域における労働状況】

重要品目(セルロース・ガラス・エタノール・アルミニウム)

・セルロース原料の一つであるユーカリについて、インド農家のインパクト評価

・セルロースについてサプライチェーン上の人権リスクに関する調査

ガラス・エタノール・アルミニウムについてサプライチェーン上の人権リスクに関する調査 ガラス・エタノール・アルミニウムの主要サプライヤーとの直接のコミュニケーション

・原料調達先における人権リスクについて意見交換し、新たに1品目で原材料・製造地域を把握

・負の影響が顕在化した際に連携して対応する旨の確認

【原材料・素材の製造地域における労働状況】

マレーシアのゴム手袋製造における強制労働

自グループ内での該当製品の使用状況の把握 直接のサプライヤーを通じて購入している製品に該当企業で製造されたものがあるか調査

・過去の購入実績あり

・現在購入・使用している製品に該当するものはないことを確認

【外国人労働者の労働状況】

COVID-19治療薬と予防ワクチンのサプライチェーン

自グループ内での技能実習生の労働状況を調査し、技能実習生の受け入れがないことを確認 主要製品のサプライチェーン上における外国人技能実習生の労働状況の把握 COVID-19の治療薬と予防ワクチンの主要なサプライヤー(7社)について調査 いずれのサプライヤーにおいても技能実習生の受け入れがないことを確認

2022年度アセスメントの結果、顕在化したリスクはなく、緩和・是正・救済措置は実施していません。

  • 外部専門家からのコメント

    塩野義製薬は、これまで行ってきたUNGPsに基づいた人権デューデリジェンスのプロセスを通じて、原材料・素材の製造地域や国内における外国人労働者の労働状況において懸念すべき人権課題が浮上した際には、ライツホルダーやNGO、有識者等の外部からの要請を反映した外部視点による取り組みを実施できるマネジメント体制を整えてきました。そして、今年8月当会より指摘したマレーシアのゴム手袋工場での強制労働に関する人権侵害の確認作業においては、複数部門で連携して10月までに事実確認を速やかに実施することができたことを評価します。引き続き新たな人権テーマが浮上した際には、これまでと同様のプロセスで可及的速やかな事実確認を行い、潜在的なリスクの芽を早期に発見できるマネジメント体制を構築して頂きたいと思っています。

     

    2022年11月3日

    CRT日本委員会 事務局長 石田 寛

有識者ダイアログ

  • 人権専門家とのダイアログ

     

    SHIONOGIは、人権尊重の取り組みについて意見を頂くため、定期的に有識者とのダイアログを実施しています。

ダイアログの様子
ダイアログ
  • 2020年

    2020年度は、SHIONOGIの人権の取り組みを強化するため、2020年10月に人権関連の問題について、海外の人権専門家とダイアログを実施しました。

     

    ・石田 寛 氏(経済人コー円卓会議日本委員会)

    ・Gus MacFarlane 氏(Verisk Maplecroft)

    ・Pauliina Murphy 氏(World Benchmarking Alliance)

     

    2021年

    2021年度の人権インパクトアセスメントの結果を踏まえ、2021年10月に海外の人権専門家とダイアログを実施しました。

     

    ・石田 寛 氏(経済人コー円卓会議日本委員会)

    ・Neill Wilkins 氏(Institute for Human Rights and Business)

    ・Camille Le Pors 氏(Lead, Corporate Human Rights Benchmark, World Benchmarking Alliance)

     

    詳細は「2021年ダイアログ」のページをご参照ください。

  • ガバナンス

    人権を含むESGに関する取り組みの計画および結果は半年に一度取締役会に報告され、経営層のコミットを得て進めています。2022年度の人権に関する取り組み計画は2023年9月の取締役会で確認されており、結果についても2023年度中に報告されます。

    また、英国で施行されたModern Slavery Act 2015に基づき、2022年度の取り組みを声明として開示していますが、本声明については2023年9月の取締役会で審議され承認を得ています。

従業員

  • 人権教育

    SHIONOGIでは、従業員への定期的な人権教育を実施しています。

ワークショップ

2020年度には、グループ内の役員・従業員向けにワークショップを開催しました。外部有識者(経済人コー円卓会議日本委員会)協力のもと、「ビジネスと人権」に関する最新動向や国内外の人権に対する取り組みの実例について学び、自部門において発生する可能性のある人権リスクについて役員・従業員が自ら考え、整理しました。

整理したマップは、2021年度以降の人権デューディリジェンスに活かされています。

ワークショップ2020

ビジネスと人権に関する教育研修

2021年度には、e-learningにて従業員へ人権教育研修を実施し、下記について学習していただきました。(受講率 89.6% (4759 人/5311 人))

 

【研修の項目】

・人権とは?

・なぜ「ビジネスと人権」?

・サプライチェーン上の人権侵害事例

・人権関連法整備の状況

・日本の人権課題

・SHIONOGIグループ人権ポリシー

・SHIONOGIの人権リスクアセスメント

・自身の業務と人権

救済

  • ご相談・通報窓口

    SHIONOGIは、「シオノギグループ人権ポリシー」に則り、すべてのビジネスパートナーの人権を尊重します。あらゆる差別・児童労働を含む強制労働を禁止し、労働者の権利を尊重します。

    従業員をはじめ、お取引先様を含むすべての方々に、ご相談・通報いただけるよう、ご相談・通報窓口を設けています。本窓口に寄せられた相談・通報の詳細に関しては「コンプライアンスに関するご相談・通報窓口」のページをご参照ください。

    また、ハラスメントに関しては、社内相談・通報窓口を設置し、窓口担当者および従業員に対するハラスメント教育を行い早期発見及び防止に努めています。