「抗菌薬原薬、作るのは我々だ」使命感が結束を生み、チーム一丸となって国内安定供給を目指す

「我々がやらなければ誰がやる」使命感を原動力に

――金ケ崎工場でのお仕事について教えてください。
金ケ崎工場では抗菌薬の製造を行っています。私はその中でもカルバペネム系の抗菌薬の製造に携わっています。抗菌薬は感染症の治療だけでなく、手術時の感染予防など様々な場面で使われる重要な薬剤です。しかし、現在の抗菌薬原薬の生産は大部分が海外に依存していて、これが国内供給の不安定さにつながっています。
2019年、ある抗菌薬原薬の国内供給が長期にわたって滞ったことで、複数の製薬会社の供給網に混乱が生じ、全国の病院で手術や治療の中止・延期が相次ぎ、医療現場は深刻な影響を受けました。抗菌薬は同じソースの原薬から多くの種類の医薬品が作られているため、一つの原薬が不足すると、何十という医薬品が品薄になるのです。そういった事態が二度と起きないよう、現在は抗菌薬原薬の国産化が進められており、私たち金ケ崎工場でもその取り組みを進めています。
――金ヶ崎工場での抗菌薬原薬製造が決まったとき、どう思いましたか。
――製造部門としてどのような瞬間にやりがいを感じますか。
患者さまの声を直接聞く機会は少ないのですが、先日「思いを繋ぐプロジェクト」という社内の取り組みがあり、MR(医薬情報担当者)を通じて医療従事者や患者さま、その家族の方々の声を聞く機会がありました。私たちが作っている薬が世の中に貢献できていることを実感し、仕事の意義を強く感じました。
また、個人的な話になりますが、最近家族が手術をしたときにも、術後の感染症予防として抗菌薬が使われていました。そういった身近な人を通じても、自分たちの仕事の重要性を再認識することがありました。
厳格な管理もチームワークで完遂する

――抗菌薬の製造には特に厳しい管理が必要だと聞きました。
抗菌薬はアレルギー反応を引き起こす可能性があり、他の医薬品にわずかでも混入すると意図しない副作用を生じるリスクがあります。そのため、クロスコンタミネーション(交叉汚染)の防止が非常に重要です。同じ敷地内で抗菌薬とそれ以外の医薬品を製造しているため、工場内での動線や設備を分離し、交わらないようにしています。環境面でも、抗菌薬が外部環境に出てしまうと耐性菌が生じる可能性があるため、AMR(薬剤耐性)対策として、抗菌薬が工場外に出ないよう厳しく管理しています。
また、国内の医薬品基準に準拠することはもちろん、アメリカやヨーロッパの基準にも対応できるよう世界基準をクリアしなければなりません。ですから、作業工程も非常に厳格で、作業着の着替え一つとっても、何段階ものステップがあり、細かく管理されています。
――技術的な課題はありましたか。
――現場ではどのような工夫をしているのですか。
――チームワークが求められますね。
持続可能な抗菌薬生産のために

――グローバル化が進む世界で、これからどのような強みを打ち出していきますか。
品質面には自信を持っています。また、持続的な生産のためにはコスト面での工夫も必要です。今後はAIやDXを活用した生産体制の確立や省人化に取り組んでいく予定です。また、連続生産方式も取り入れながら、より効率的な生産を目指しています。
ただ、抗菌薬原薬の国産化は企業努力だけでは難しい面もあります。国と二人三脚で歩み、企業努力でどうしてもカバーしきれない部分は支援いただくことも重要です。最終的には継続的に抗菌薬を供給し続け、適正な価格で患者さまに届けることが私たちの使命だと考えています。
私たちが製造している抗菌薬は、多くの方の命を守るために欠かせないものです。確実に届けられるよう、これからも安定供給に努めていきます。金ケ崎工場の抗菌薬製造の取り組みを通じて、少しでも社会に貢献できれば嬉しいです。
