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道修町から、大阪梅田へ。 147年目の塩野義製薬が踏み出した「本気の一歩」
―統合報告書という言葉を初めて聞く方に向けて、どのようなものか教えてください。
統合報告書は会社に関わるすべての人(ステークホルダー)に、企業の価値を深く理解してもらうために、会社の課題や目指す未来をまとめたものです。SHIONOGIグループでは毎年発行しており、その年の経営成果や戦略だけでなく、中長期のビジョンも含めて1冊にまとめています。
― 統合報告書は「投資家向けの資料」というイメージがありますが、それ以外の方が読んでも意味があるものなのでしょうか?
もちろんです。統合報告書は、財務情報だけでなく、経営戦略や事業の方向性、社会課題への取り組みまでを1冊にまとめたものですので、投資家に限らず幅広い方にとって企業を深く知る手がかりになります。当社の統合報告書でも、中期経営計画や事業の進捗を掲載していますので、就活生の企業研究や、当社に関心をお持ちの方にも活用いただけたらと思います。
―そのような位置づけとは知りませんでした。SHIONOGIグループの統合報告書の特徴を教えてください。
最も重要視しているのは、事実をありのままにお伝えすることです。良い面しか触れないのはフェアではないですし、隠していたことが後から判明すると、落胆や裏切りのような印象を与えてしまいます。それならばと、SHIONOGIグループという企業のありのままの姿を伝えることを選びました。
―ステークホルダーに伝えたい「ありのままの姿」とは?
例えば、統合報告書2025の冒頭にある「社長メッセージ」では、好調な業績だけでなく、目標に届かなかった事実もあえて記載しました。3期連続で最高売上・最高営業利益を更新したものの、期初に掲げた目標へは届かなかったことを述べています。
さらに、計画が未達に終わったことに対して、投資家から頂いた失望の声と、それらに対する取締役会での議論へと続きます。投資家からの声をどう考え、どのようなアクションを実施したのかを明確にすることで、現在の経営戦略を深く理解していただける内容を目指しました。
現在進めている、鳥居薬品やJT医薬事業部等との経営統合も同様です。過去の失敗から学び、得た教訓を生かして、目的意識や価値観を共有しながら進めていることをひも解いています。ステークホルダーと共に成長する企業であることを丁寧に伝えています。
―統合報告書を読んだステークホルダーから、お声がけなどありましたか?
社外取締役の一人から、「成果だけでなく課題も書かれている統合報告書に感銘を受けて就任を決めた」と伺いました。良い面だけでなく、私たちが大切にしてきた正直に伝える姿勢を見ていただけたことがわかり、大変うれしかったです。
―企業のレポートを読み慣れない人には、統合報告書は堅苦しいイメージがあります。読みやすさへの工夫はありますか?
おっしゃるとおり、企業側が伝えたいことや、単なる事実の羅列では面白みに欠け、皆さまに興味を持っていただけません。そこで、ストーリーで伝えようと心を砕きました。
統合報告書2025は、私たちの強みである「低分子創薬」について、「最もよい薬を創り、造り、売る」というキーワードで紹介しました。ベテランから若手へ技術が継承されるしくみ、挑戦をよしとする風土が生んだ新しい強み、そして財務的な価値につながる流れを特集記事として組みました。
一方で、紙面の限界などで説明しきれない点も多くありました。例えば、統計値だけを見ると、時間短縮勤務の取得率が少し低めの印象ですが、実は、当社の所定労働時間は7時間と、法定労働時間より1時間短いのです。
時短勤務でなくても育児と両立して働ける環境を整えた結果、時短勤務の利用割合が少なく、当社の働きやすさをうまく伝えきれないもどかしさがあります。こうした「数字だけでは伝わらない価値」は他にもあって、例えば抗菌薬を製造できるノウハウ(知的製造資本)もその一つです。どうすればその素晴らしさを伝えられるか、ずっと考えています。
―限られた紙面で全てを説明できない中、読者にはどのように読んでいただきたいですか?
ステークホルダーの関心は多岐にわたり、全部に応えようとすると情報量が増えすぎ、かえって本質が伝わりません。そこで伝えるべき内容をチームで深く議論し、研ぎ澄ませました。だからこそ、そのときに興味を持ったパートを読んでいただけたらと思います。表現しきれなかった部分も含め、読むたびに新しい気づきが得られるような報告書を目指しました。
―統合報告書の制作では、情報のとりまとめからストーリー構成まで幅広く手掛けていらっしゃいますが、これまでのキャリアも類似の部署を?
いえ、もとは研究職です。化合物の安定性や溶けやすさなどの物理化学的性質を研究する業務に15年近く携わりました。働きながら博士号も取得させてもらい、研究の仕事を堪能する一方で、製造や販売、コーポレート機能など、会社にはまだ自分の知らない世界が広がっていることに気づき始めました。
SHIONOGIグループは、本人の希望に応じて成長の場を与えてくれます。だからこそ、「まだ知らない世界がこんなにあるなら、もっと広く関わってみたい」という思いが強くなっていきました。今度は自分が会社に貢献する番だ、と社内公募に自ら手を挙げ、現在のサステイナビリティ推進部へ異動しました。
―元は研究者だったのですね。仕事内容が大きく変わりましたが、いかがですか?
研究職で博士号まで取得した後にコーポレート機能へ異動するキャリアは異色ですが、他のメンバーも、営業や海外事業など、多彩なキャリアを持っています。それらのバックグラウンドがあるからこそ、各現場のリアルな強みを深く理解し、説得力のあるストーリーを紡ぎ出すことができると実感しています。
―今回の『統合報告書2025』は、第5回日経統合報告書アワードで優秀賞を受賞されました。
ありがとうございます。賞を狙ったわけではなく、あくまで当社の情報開示が今どのレベルにあるのか、現在地を知るためのベンチマーク(外部評価)として応募しました。私たちが紡いだストーリーや透明性が正しく伝わり、評価されたのは大きな手応えです。いただいたフィードバックはチームで共有し、次年度に活かします。
―「統合報告書を読んでみようかな」と思った就活生に向けて、役立つ読み方のアドバイスをお願いします。
全部読もうとすると大変です。まずは「社長メッセージ」(P6)と、「価値創造プロセス」(P20)に目を通して会社の全体像をつかんでください。あとは、自分の興味があるキーワードやコンテンツが書かれたページを「つまみ読み」していただくのが一番入りやすいと思います。
読み手の関心に応じてさまざまな角度から読み進められ、かつSHIONOGIグループの仕事全体を見渡せる報告書です。入社後の働く姿を想像しながら読むと、自分の仕事が価値創造のプロセスのどこに位置するのか、また前後ではどのような人たちが関わっているのか、そのつながりが見えてくるはずです。
―SHIONOGIグループに入社した世界を、よりリアルに感じられそうです。
統合報告書を通じて会社全体を知ると、自分の仕事が価値創造のどこにつながっているのかが見えてきます。「自分の専門性が、こんなところにも活かせるかもしれない」と視野が広がるきっかけになれば幸いです。
自分の仕事が会社に貢献できているという実感は、さらなるモチベーションや誇りへと発展します。統合報告書には、SHIONOGIグループが生み出せる価値がぎっしりと詰まっています。この環境で自らも成長したいと感じていただける方に、関心を持っていただけたらうれしいです。まずは、その扉となる統合報告書を開くところから始めてみてください。