世界で活躍した「二刀流」が、伝統に新しい風を吹き込む

世界で活躍した「二刀流」が、伝統に新しい風を吹き込む

1949年の創部から78年目を迎えるSHIONOGIレインボーストークス。チームを率いるのが松田光(まつだ ひかる)監督です。現役時代は投打の二刀流で世界の頂点に立った、日本を代表するソフトボール選手です。


今、チームは「楽しむために、勝つ」という監督の哲学と、伝統の「仕事と競技の両立」を掛け合わせ、さらなる進化を遂げようとしています。「健康」を社会に届けるSHIONOGIグループにとって、企業スポーツはどのような意味を持つのでしょうか。そこには、ヘルスケア企業としての哲学が込められていました。

すべては、ソフトボールを楽しむために

松田監督

――通算94勝、打率.380、本塁打75本。圧巻の実績ですが、なぜ二刀流を極められたのでしょうか。

松田監督(以下、松田):実は二刀流を目指したわけではありません。子どもの頃から、とにかく試合にたくさん出たかった。そのための「手段」が投打両方だったのです。打たれても自分のバットで取り返せばいい。私にとって二刀流は特別なことではなく、ソフトボールを一番楽しむための方法でした。

 

――「試合にたくさん出るために二刀流を目指した」と聞くと、すごくソフトボールが好きだったことが伝わります。幼少期から一目を置かれていたのでしょうか?

松田:いえ、高校までは身長も低くて、球速も時速110km程度と平凡で目立たない存在でした。転機は大学時代です。大学1年生のたった2週間で、球速が時速20km近くも速くなったのです。おそらく成長期とトレーニング、そして体の使い方がかみ合った瞬間だったのだと思います。

 

それまでは変化球や駆け引きで相手をかわすスタイルでしたが、スピードという武器を手に入れたことで「真っ向勝負」ができるようになり、さらに面白くなりました。

 

――ソフトボールの本当の面白さを知ったことで、何か変わりましたか?

松田:楽しむことを最優先するようになりました。試合を誰よりも楽しみたい。そのためには勝つことが必要。だから練習しよう。そうして次第に「楽しむために練習がある」と考えるようになり、成績も良くなる好循環が生まれました。

その結果、男子日本代表として臨んだ2019年の世界選手権での準優勝や、WBSC年間最優秀選手*の受賞につながったのだと思います。選手たちにも、辛い練習を目的化せず、心から楽しむための準備として取り組んでほしいと伝えています。辛い練習が目的になって、ソフトボールを嫌いになってほしくない。勝って、楽しんで、競技人生を全うしてほしいと願っています。

 

*WBSC年間最優秀選手:WBSC(世界野球ソフトボール連盟)が、その年に世界で最も活躍した野球・ソフトボール選手をそれぞれ1名ずつ選出する、競技界最高の名誉ある賞。松田監督は2019年に同賞を受賞した。

答えを教えすぎず、データを重視

松田監督

――2023年1月、SHIONOGIレインボーストークス(当時はシオノギレインボーストークス兵庫)の監督に就任され、2024年にはプレーオフ進出を果たされました。また、ソフトボール女子日本代表コーチも務められています。指導において大切にしていることとは?

松田:「答えを教えすぎない」ことです。骨格も感覚も異なる選手に、私の正解を押し付けても意味がありません。ありたい姿から逆算し、必要な情報を自分で選択する。グラウンドで試合の状況を瞬時に判断し、ひらめくことができる「自立した選手」の育成を目指しています。

 

――ご自身の成功体験を伝えるのではなく、選手が自分で答えを見つける過程を大切にされているのですね。次に、2025年シーズンの結果についてお聞かせください。

松田:JDリーグ西地区4位という、非常に悔しい結果でした。3位のチームとは同勝率ながら、直接対決の差で順位が決まりました。選手たちには「あと1勝で運命が変わっていた」という現実をまっすぐに伝えています。
あの場面でのヒット一本、あの守備でのアウト一つ、それらができていれば、プレーオフに進出し日本一を狙える可能性があった。この重みを、他人事ではなく自分事として受け止められるか。それが、チームが次の一歩を踏み出すための鍵になります。

2025年JDリーグ西地区結果
3位とは同勝率ながら、直接対決での勝敗が順位を決めるという結果に。
2025年JDリーグ西地区結果  3位とは同勝率ながら、直接対決での勝敗が順位を決めるという結果に。

――チームの良さと、強化ポイントを教えてください。

松田:SHIONOGIレインボーストークスの選手たちは本当に明るくて、とても雰囲気のよいチームです。機動力や長打力といった攻撃面は魅力的です。一方で、守備には課題が残ります。エラーが失点につながり、リズムを崩す場面が多々あります。課題は、やるべきプレーを確実に遂行できる堅実さを身につけることです。
長所である攻撃力を活かすためにも、守備の土台を固め、自滅しないチーム作りが戦略の中心になります。

 

――課題解決のために、具体的にどのような取り組みをされていますか?

松田:データを重視しています。成績が振るわないと、選手はどうしても印象や感覚に頼りがちになります。しかし、数字は嘘をつきません。ヒットが出ない現実、エラーの確率といった客観的なデータと向き合い、現状の自分を受け入れる。そうして初めて、何を修正すべきかが見えてきます。

社会人としての自立とキャリア形成も同時に目指す

田中部長

――ここからは、部長の田中さんにもお伺いします。今回、松田さんを監督として招いた背景を教えてください。

田中さん(以下、田中):これまではチームのOGが監督を務め、その時々でチームの土台を築いてきました。そこにさらなるレベルアップを重ねるには、外部からの新しい視点が必要だと考えました。松田監督は世界的な実績をお持ちですし、何より二刀流で投打両面を知り尽くしています。松田監督のスピードボールに選手たちが慣れていくことで、実戦でも大きなメリットがあると考えました。

 

そして、圧倒的な技術と経験を持ちながらも、常に謙虚で周囲の意見に耳を傾ける姿勢が印象的でした。臨時コーチを依頼した後、現場から「ぜひ松田さんに来てほしい」という強い要望があったほどです。球のスピードや技術、そして優れた人柄。きっと技術的にも体力的にも進化できると確信したことで、招致に至りました。

 

――SHIONOGIレインボーストークスでは、「選手である前に、社会人であること」を強く掲げています。チームの運営方針について詳しく教えてください。

田中:私たちは選手を、塩野義製薬のグループ会社であるシオノギファーマの従業員として迎え入れ、仕事とスポーツを両立しています。それは、選手を引退した後の長い人生もSHIONOGIグループの一員として豊かに過ごしてほしい、という願いからです。

 

シーズン中は競技に比重を置き、シーズンオフは一般従業員と同じ業務に携わり、勤務経験を積みつつ、業務終了後にトレーニングを行います。「もっと練習時間があれば」と思われるかもしれませんが、競技引退後も活躍できる道ができあがっています。
これが創部以来続く私たちの伝統であり、誇りです。引退後のキャリアが明確だからこそ、現役時代に思い切ってソフトボールに集中できる環境を大切にしています。

 

選手はソフトボールで高校・大学と競技を続けてきた方々ですから、ソフトボール以外の分野でも活かせる資質をお持ちです。また、従業員の多様性という観点からも、スポーツ選手が一緒に働く仲間であることに意義があると考えています。

 

――これからチーム加入を目指す方に向けて、「求める人物像」をお聞かせください。

田中:求めているのは、ソフトボールで一流を目指す強い気持ちを持ちつつ、一人の社会人として自立する意欲のある方です。仕事と競技の両立は決して楽ではありませんが、その環境で「どう工夫するか」を考え、試行錯誤できる選手は、引退後も社会で活躍できるはずです。私たちの考えに共感してくれる方と共に、チームの未来を作っていきたいです。

スポーツを通じて届ける「健康」という価値

――チームの掲げるミッションや、未来へのビジョンについてお聞かせください。

田中:SHIONOGIレインボーストークスは、ヘルスケア企業であるSHIONOGIグループの一員です。選手たちが元気に活躍する姿は、SHIONOGIグループが大切にしている健康という価値を、そのまま形にしたものだと考えています。その姿を通じて、従業員のモチベーション向上や多様性の尊重といった社内文化を醸成すること。そして地域の子どもたちの育成や社会貢献活動を通じて、「健康的なライフスタイルに貢献する企業」という価値を社会に届けていくこと。これが私たちの使命です。

 

――最後に松田監督に伺います。今後SHIONOGIレインボーストークスをどのようなチームにしていこうと考えていますか?

松田:目指すのは、「地域、会社、すべての人に愛されるチーム」です。企業のサポートがあるからこそ、私たちはソフトボールに打ち込めます。その感謝を形にする一番の方法は、やはり結果を残すことです。選手たちは、仕事と練習というハードな両立の中で、日々懸命に努力しています。その姿を見て、「塩野義製薬のチームはすごい」「応援したい」と感じていただけるよう、これからも「勝つこと」と「成長すること」の両方を追求し続けていきます。「日本一」を目指し、ファンの皆さまに心躍る試合をお届けできるよう頑張ります!

松田監督

三輪さくら投手の記事リンク
https://www.shionogi.com/jp/ja/journal/20250331.html

小林キャプテンの記事リンク
https://www.shionogi.com/jp/ja/journal/20250408.html