2024/10/29

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸のグローバル第3相曝露後発症予防試験(SCORPIO-PEP試験)における良好な結果について

  • 経口抗ウイルス薬でCOVID-19の発症抑制効果を示した世界初の臨床試験結果(主要評価項目を達成)

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg、以下「エンシトレルビル」)が、COVID-19の発症抑制効果の検証を目的としたグローバル第3相曝露後発症予防試験(SCORPIO-PEP試験)において主要評価項目を達成したことをお知らせいたします。

 

 SCORPIO-PEP試験は、COVID-19患者の同居家族または共同生活者を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較のグローバル第3相臨床試験です。本試験は、米国、南米、アフリカ、および日本を含むアジアで実施し、約2,400例が登録されました。

 

 本試験の主要評価項目である「治験薬投与開始から10日間以内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しCOVID-19症状を発症した被験者の割合」について、エンシトレルビル投与群はプラセボ投与群と比較して、統計学的に有意な低下を示しました。また、安全性面での新たな懸念は確認されませんでした。

 本試験結果の詳細は、今後の学会等で発表予定です。

 

 臨床開発部門の責任者である、サイモン・ポーツマス医学博士は、次のように述べています。

「COVID-19は、依然として公衆衛生上の重大な課題ですが、現在予防使用が承認されている経口抗ウイルス薬はありません。自分自身や周囲の人をSARS-CoV-2感染から守るための簡便な予防手段が求められていますが、今回の良好な試験結果により、エンシトレルビルがCOVID-19の有効な予防手段として貢献することが期待されます。」

 

 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めています。本臨床試験も含め、エンシトレルビルのグローバル開発を加速し、さらなるエビデンスの集積に努めるとともに、各規制当局による審査等に迅速に対応してまいります。引き続き、社会の安心・安全の回復に貢献するとともに、新たな変異株の出現や今後の流行状況に合わせ、必要とされる治療薬、ワクチンを迅速に提供できるよう、COVID-19に対する研究開発を推進してまいります。

 

 なお、本件が2025年3月期の連結業績予想に与える影響については軽微です。

 

以 上

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.

 

【エンシトレルビル フマル酸について】

 COVID-19治療薬であるエンシトレルビルは、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、エンシトレルビルは3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。オミクロン株流行期に、重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無にかかわらず幅広い軽症/中等症患者を対象に実施した第2/3相臨床試験のPhase 3 part(SCORPIO-SR試験)において、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状に対する改善効果(主要評価項目)が確認されています1、2、3。これらの結果に基づき、日本において2022年11月に緊急承認4され、2024年3月に通常承認5されました。またシンガポールにおいては、2023年11月にSAR*(Special Access Route)申請に基づいた輸入許可を受けたことにより、一部の施設において使用が可能となっています6。さらにグローバルにおいては、SCORPIO-HR試験(COVID-19に関するACTIV-2プログラムの一つであるACTIV-2d)7、8、入院患者を対象としたSTRIVE試験9、家庭内濃厚接触者を対象としたSCORPIO-PEP試験10、小児を対象とした国内第3相臨床試験11が進行中です。これらに加え、当社とMedicines Patent Poolは、低中所得国(LMICs)に広く提供することを目的としたライセンス契約を締結し本薬のアクセス拡大に向けた取り組みを進めています12、13
* SAR:未承認の治療薬を輸入・供給するためにシンガポールが独自に有する薬事システム、医療機関に所属する各医師からの申請が必要

参考:

    1. Yotsuyanagi H., et al. Efficacy and Safety of 5-Day Oral Ensitrelvir for Patients with Mild to Moderate COVID-19. JAMA Network Open. 2024

    2. プレスリリース:2022年9月28日 
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)の 第2/3相臨床試験 Phase 3 partにおける良好な結果について(速報)

    3. プレスリリース:2023年2月22日 
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について ‐国際学会CROI 2023において新規データを発表‐

    4. プレスリリース:2022年11月22日 
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ® 錠125mg」の 緊急承認制度に基づく製造販売承認取得について

    5. プレスリリース:2024年3月5日 
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバⓇ錠125mg」の日本における通常承認の取得について

    6. プレスリリース:2023年12月19日 
    シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の平安塩野義香港とJuniper社のサブライセンス契約の締結およびSAR承認取得について

    7. プレスリリース:2022年3月16日 
    塩野義製薬とACTGによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 S-217622のグローバル第3相臨床試験の実施について

    8. プレスリリース:2024年5月13日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸のグローバル第3相臨床試験(SCORPIO-HR)結果について

9. プレスリリース:2023年2月16日 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の グローバル第3相臨床試験(STRIVE)開始について

    10. プレスリリース:2023年6月9日 
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸のグローバル第3相臨床試験開始について‐ COVID-19の発症抑制効果の検証を目的とした発症予防試験を開始 ‐

    11. プレスリリース:2023年6月29日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の国内第3相臨床試験開始について ‐ 6歳以上12歳未満の小児を対象とした臨床試験を開始 ‐

    12. プレスリリース:2022年10月4日

    塩野義製薬とMedicines Patent Poolによる COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)に関するライセンス契約締結について

    13.プレスリリース:2023年6月26日

    Medicines Patent Poolによるジェネリック医薬品メーカー7社との COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸の製造に関するサブライセンス契約の締結