- SCORPIO‑PEP試験は経口抗ウイルス薬によるSARS-CoV-2曝露後におけるCOVID-19の発症予防効果を示した世界で初めての第3相臨床試験
- エンシトレルビル フマル酸はCOVID-19の曝露後発症予防※1に使用可能な唯一の経口抗ウイルス薬
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、抗SARS-CoV-2薬 エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg、以下「エンシトレルビル」)のグローバル第3相曝露後発症予防試験(SCORPIO-PEP※2試験)の結果が、「The New England Journal of Medicine」に掲載されたことをお知らせいたします。
※1 曝露後発症予防:新型コロナウイルス感染者との接触などウイルスに感染した可能性が生じた際に、発症前に抗ウイルス薬を投与することで感染症の発症を防ぐ行為
※2 PEP: Post-Exposure Prophylaxis(曝露後発症予防)
SCORPIO‑PEP試験は、エンシトレルビルを曝露後発症予防(PEP)の目的で使用した際の有効性および安全性を評価することを目的としたグローバル第3相臨床試験です。本試験は、COVID-19発症患者の同居家族、または共同生活者2,041例を対象として、米国、南米、アフリカ、日本を含むアジアで実施されました。
主要解析対象集団(n=2,041)において、投与後10日目までにCOVID‑19を発症した被験者の割合は、エンシトレルビル群では2.9%、プラセボ群は9.0%であり、エンシトレルビル群はプラセボ群に対して、COVID‑19の発症割合を統計学的に有意に67%低下させました(リスク比:0.33;95%信頼区間:0.22-0.49;p<0.0001)¹。この結果、エンシトレルビルは早期にウイルスの増殖を抑制することで、SARS-CoV-2曝露後におけるCOVID-19の発症リスクを減少させることが示されました。また、重症化リスク因子を有する被験者を対象としたサブグループ解析においても、投与後10日目までにCOVID-19を発症した割合は、エンシトレルビル群では2.4%、プラセボ群では9.9%であり、エンシトレルビル群はプラセボ群に対して、COVID-19の発症割合を76%低減させました¹(リスク比:0.24、95%CI:0.12–0.49)1。
さらに、エンシトレルビルの忍容性は良好であり、有害事象の発現率はエンシトレルビル群とプラセボ群で同程度でした。発現頻度が1%以上であった主な有害事象は、頭痛、下痢、鼻咽頭炎、咳、疲労、インフルエンザでした²。
COVID-19は現在もなお、公衆衛生上の重大な課題です。COVID-19の予防においてはワクチン接種が基本とされています3が、接種率の低さや接種後の免疫効果が時間の経過とともに減弱することに加え、新たな変異株が出現する可能性を考慮すると、ワクチン接種のみでウイルス感染や発症、重症化を完全に抑制することは困難です。このような状況の下、COVID-19患者と接触した方への抗ウイルス薬の予防投与は、特に重症化リスク因子を有する方において、COVID-19予防の重要な選択肢の一つとなります。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つとして「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めています。今後も、社会の安心・安全に貢献するとともに、新たな変異株の出現や今後の流行状況に合わせ、必要とされる治療薬や予防薬、ワクチン等を迅速に提供できるよう、感染症に関する研究開発を推進してまいります。
以 上
【SCORPIO-PEP試験について】
SCORPIO-PEP試験は、COVID-19を発症した患者の同居家族または共同生活者を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較のグローバル第3相臨床試験です。本試験は米国、南米、アフリカ、日本を含むアジアの地域で2023年6月から2024年9月にかけて実施され、経口抗ウイルス薬として世界で初めて「COVID-19を発症した患者の同居家族または共同生活者における曝露後発症予防」を主要評価項目として、有効性が確認されました。本試験には登録時点でSARS‑CoV‑2感染に関するスクリーニング検査が陰性であり、症状を有していない12歳以上の被験者が参加しました。これらの被験者は、COVID‑19に感染した有症状患者と同一世帯で生活し、SARS-CoV-2への曝露が確認された方々です。主要解析は、SARS‑CoV‑2陰性が確認された世帯内接触者2,041例を対象に実施されました。被験者は1:1の割合で、エンシトレルビル群(1日目375mg、2~5日目125mg)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、1日1回、5日間経口投与を受けました。投与は同居するCOVID-19患者が症状を発現してから3日以内に開始されました。なお、世帯内接触者の98%以上がSARS-CoV-2のN抗体および/またはS抗体陽性であり、ほぼ全員が比較的最近のSARS-CoV-2感染歴、ワクチン接種歴、またはその両方を有していました。
【エンシトレルビル フマル酸について】
抗SARS-CoV-2薬であるエンシトレルビルは、北海道大学と塩野義製薬の共同研究により創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。SARS-CoV-2は、3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、エンシトレルビルは3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。オミクロン株流行期に、第2/3相臨床試験のPhase 3 part(SCORPIO-SR試験)が実施され、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状に対する改善効果(主要評価項目)が確認されました4,5,6。これらの結果に基づき、日本において2022年11月に緊急承認7され、2024年3月に通常承認8されました。また、2025年には、小児を対象とした国内第3相臨床試験9が実施され、良好な安全性と忍容性が示されるとともに、成人と同様の薬物動態を確認しました。この結果を踏まえ、現在の12歳以上から、6歳以上かつ体重20kg以上に範囲を拡大する用法・用量の追加申請を実施しました10。さらに、2026年3月には、グローバル第3相曝露後発症予防試験(SCORPIO-PEP試験)の良好な結果に基づき、日本におけるCOVID-19の曝露後予防に関する効能・効果の承認を取得しました11。
海外においては、米国で2025年にCOVID-19の曝露後予防を適応症として米国食品医薬品局 (FDA)に新薬承認申請を行い、現在審査が進められています12,13。なお、FDA の審査終了目標日(PDUFA date)は 2026 年6月16日です。欧州では、2025年にCOVID-19の曝露後予防と治療に関して、欧州医薬品庁(EMA)による審査が進められています。シンガポールでは、2023年11月にSAR*(Special Access Route)申請に基づいた輸入許可を受けたことにより、一部の医療機関において使用が可能となっています14。台湾ではCOVID-19の曝露後予防の適応症で新薬承認申請中です。
これらに加え、当社とMedicines Patent Poolは、低中所得国(LMICs)における本薬の幅広い提供を目的としたライセンス契約を締結し、グローバルなアクセス拡大に向けた取り組みを進めています15,16。
* SAR:未承認の治療薬を輸入・供給するためにシンガポールが独自に有する薬事システム、医療機関に所属する各医師からの申請が必要
【参考】
1. Hayden, F. G. (2026). Ensitrelvir for COVID-19 postexposure prophylaxis in household contacts. New England Journal of Medicine. Advance online publication
2. Hayden, F. G., Ohmagari, N., et.al. (2025). Ensitrelvir for the prevention of COVID-19 among household contacts: Key subgroup analyses of SCORPIO-PEP phase 3 study [Conference abstract]. Congress of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases.
一般社団法人日本感染症学会 ワクチン委員会・COVID-19 ワクチン・タスクフォース
5. プレスリリース:2022年9月28日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)の 第2/3相臨床試験 Phase 3 partにおける良好な結果について(速報)
6. プレスリリース:2023年2月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について ‐国際学会CROI 2023において新規データを発表‐
7. プレスリリース:2022年11月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ® 錠125mg」の 緊急承認制度に基づく製造販売承認取得について
8. プレスリリース:2024年3月5日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバⓇ錠125mg」の日本における通常承認の取得について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の国内第3相臨床試験開始について ‐ 6歳以上12歳未満の小児を対象とした臨床試験を開始 ‐
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の日本における6歳以上かつ体重20kg以上の小児に対する用法・用量の追加申請について
抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)薬 ゾコーバ®の日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防に関する効能・効果追加承認について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の COVID-19予防におけるFDAへのローリング・サブミッションの開始について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸のCOVID-19予防における米国FDAによる新薬承認申請受理について
14. プレスリリース:2023年12月19日
シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の平安塩野義香港とJuniper社のサブライセンス契約の締結およびSAR承認取得について
塩野義製薬とMedicines Patent Poolによる COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)に関するライセンス契約締結について
Medicines Patent Poolによるジェネリック医薬品メーカー7社との COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸の製造に関するサブライセンス契約の締結
[お問合せ先]
塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム: