ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)

日本における感染者数は、80万人から100万人程度と推定されています。
感染しても自覚症状がなく、数十年と潜伏期間が長いため、感染しているかどうかは検査をしないとわかりません。
感染者の約5%にHTLV-1関連疾患が発症することがあります。
HTLV-1関連疾患としては、主に3つ(血液、神経、眼の病気)が知られています。

症状

感染しても、直ちにHTLV-1関連疾患になるわけではありません。

[血液の病気]
成人T細胞白血病
リンパ腫(ATL)
感染したリンパ球(T細胞)ががん化する病気で、感染者が発症する割合は、生涯において5%程度と考えられています。
40歳をこえるまでATLはほとんど発症しません。
[神経の病気]
HTLV-1関連
脊髄症(HAM)
歩行障害や排尿障害を引き起こす脊髄の病気で、感染者が発症する割合は、生涯において0.25%程度と考えられています。
[眼の病気]
HTLV-1関連
ブドウ膜炎(HU)
眼球内のぶどう膜の炎症が起こり、視力が低下する病気です。
感染者が発症する割合は、HAMよりもやや多いと考えられています。

病原体

ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)

検 査

HTLV-1抗体検査。
妊婦健診で行われるほか、保健所で受けることができます。

治 療

ATL:骨髄移植など。
HAM:ステロイド、インターフェロンαなど。
HU:ステロイドの点眼薬や内服薬。

予 防

母子感染予防
3か月以上の長期母乳育児により感染する可能性が高まるといわれており、人工栄養のみで育てることが勧められています。
性行為感染予防
コンドームの使用が有効とされています。

感染経路

主な感染経路は母子感染と性行為感染です。
最近、母乳以外の母子感染ルートとして経胎盤感染の可能性が示唆されました。
性行為感染によるHTLV-1感染は、主に男性から女性に感染すると考えられていました。実態は十分解明されているわけではありませんが、継続的な献血者における抗HTLV-1抗体陽転化症例を解析した結果、「男性から女性への感染」と「女性から男性への感染」の比率が3:1程度であると推定され、女性から男性への感染も少なくないことが示唆されています。
以前は輸血による感染がありましたが、献血時のHTLV-1抗体検査により、ほぼ100%防げています。(1986年以前での輸血では感染リスクが残ります)