梅毒(ばいどく)

性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。
検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。
感染が脳や脊髄に及んだ場合を神経梅毒と呼び、どの病期でも起こりうるとされています。

症状

病期によって、症状の出現する場所や内容が異なります。
治療を行わなかった場合の典型的な経過は次のとおりです。

Ⅰ期顕症梅毒
感染後数週間
梅毒トレポネーマが侵入した部位(主に口の中、肛門、性器など)にしこりや潰瘍(かいよう)ができることがあります。
また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。
これらの症状は痛みを伴わないことが多いです。
治療をしなくても症状は自然に軽快しますが、ひそかに病気が進行する場合があります。
Ⅱ期顕症梅毒
感染後数か月
感染から3か月程度経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれます。
この時期に、小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」とよばれる淡い赤い色の発疹が、手のひら、足の裏、体幹部などに出ることがあります。
その他にも肝臓、腎臓など全身の臓器にさまざまな症状を呈することがあります。
発疹などの症状は、数週間以内に自然に軽快しますが、梅毒が治ったわけではありません。
また、一旦消えた症状が再度みられることもあります。
アレルギーや他の感染症などとの鑑別が重要であり、適切な診断、治療を受ける必要があります。
晩期顕性梅毒
感染後数年
感染後、数年程度経過すると、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤(しこり)が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。
また大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあります。
現在では、抗菌薬の普及などから、晩期顕性梅毒はまれであるといわれています。
先天梅毒
妊娠している人が梅毒にかかると、胎盤を通して胎児に感染し、流産、死産となったり、子が梅毒にかかった状態で生まれる先天梅毒となることがあります。
感染した妊婦への適切な抗菌薬治療によって、母子感染するリスクを下げることができます。

病原体

梅毒(ばいどく)トレポネーマ

検 査

血液検査(抗体検査)。 ほとんどの医療機関で血液検査が可能です。
また、病変から検体を採取して顕微鏡で観察する検査や、PCR 検査が行われることもあります。
地域によっては、保健所などで匿名/無料で検査ができるところもあります。
医師が検査結果から感染の状態を正確に判断するために、感染の可能性がある時期や感染の予防状況(コンドーム使用など)について、医師に伝えましょう。
また、感染の可能性がある周囲の方(パートナーなど)も検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要です。

治 療

抗菌薬(ペニシリン系など)の内服治療。
2021年9月には、梅毒の世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤の国内での製造販売が承認されました。神経梅毒などの場合は、抗菌薬の点滴により治療が行われます。
内服治療の場合、内服期間は病期などを考慮して医師が判断します。医師の許可を得るまでは、症状が良くなっても、自己判断で内服を中断しないようにしましょう。
また、医師が安全と判断するまでは、性交渉などの感染拡大につながる行為は控えましょう。

感染経路

主に、粘膜や皮膚が、梅毒の病変部位と直接接触することで感染します。
具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)などです。

再感染

梅毒が完治しても、今後の新たな感染を予防できるわけではありません。
このため、適切な対策(コンドームの使用、パートナーの治療など)が取られていなければ、再び梅毒にかかる可能性があります。