第3期事業:ガーナ共和国 イースタン州 アッパー・マニャ・クロボ郡
UMK郡 住居の様子

事業概要
事業地 | ガーナ共和国 イースタン州 アッパー・マニャ・クロボ郡(UMK郡) |
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対象人口 | 72,160人(直接受益者:30,668人 間接受益者:48,867人) ※直接受益者の一部は、間接受益者に含まれる |
実施期間 | 2023年6月~2026年5月 |
事業費 | 2,400万円(初年度) |
パートナー | 公益財団法人ジョイセフ |
支援地域


西アフリカに位置するガーナは、熱帯性気候で年間を通して高温多湿です。
イースタン州の東部にはヴォルタ湖があり、対岸まで10km以上の距離を2時間かけて移動するケースもあります。
また、伝統的価値観の根強い地域でもあります。
アッパー・マニャ・クロボ郡(UMK郡)の母子保健課題
保健施設
までの距離
約10~20km
民家の一角を間借りして
診療している診療所
66%
保健施設での
分娩率
45.2%
経口補水液(ORS)による
下痢症の治療
48%※
※ガーナ全体の数値
保健施設までボートで2時間以上移動

分娩室は狭くて暑い

ガーナの妊産婦死亡率は日本の約60倍※1です。UMK郡では、保健施設までの距離は地区によっては約10~20キロあり、アクセスの改善は重要課題です。診療所(CHPS※2)は41カ所ありますが、その半数以上は民家の一角を間借りして診療しており、出産できる保健施設が近隣にない住民が多いです。
また、水や衛生の課題も大きく、ガーナの5歳未満児の子どもの死因の25%は下痢性疾患が占めています※3。経口補水液による治療もまだまだ普及していません。
- ※1unicef THE STATE OF THE WORLD ’S CHILDREN 2021
- ※2CHPS: Community-Based Health Planning and Services 基礎的保健医療サービスを提供する診療所
- ※3Binka E, Vermund SH, Armah GE (2011) Rotavirus as a cause of diarrhea among children under 5 years of age in urban Ghana: Prevalence and serotypes/genotypes. PaediatricInfectious Disease Journal 30: 718-730.
保健指標(参考値)
項目 | ガーナ全体※1 | UMK郡※2 |
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産前健診受診率(4回以上) | 85% | 79.9% |
専門技能者の介助/保健施設での出産割合 | 79% | 45.2% |
完全母乳育児率 | 43% | - |
予防接種完遂率 | 67.5% | 85% |
1歳未満児の下痢症発生件数(対象5サイト) | - | 1,451件 |
経口補水液(ORS)による下痢症の治療率 | 48% |
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- ※1UNFPA世界人口白書2020年、UNICEF世界子供白書2021年
- ※2UMK郡保健局統計2022
UMK郡での本事業対象の保健施設(6施設)

活動内容
①インフラの整備 | ②教育・啓発 | ③地域支援体制強化 | |
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母子保健サービスへのアクセス向上 |
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水衛生の改善 |
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栄養状態の改善 |
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医療アクセスの改善 | 本事業では、物理的アクセスの課題が大きい2つの保健施設を対象にハード面の整備を行います。アカテン保健センターにおいては、ガーナでは初の試みである「妊婦待機所」を建設し、妊婦が安心して出産まで適切なケアを受けられる環境を整えます。また、6つの保健施設に対して、医療従事者、母子保健推進員、OTC薬の売り手、若者ピア・エデュケーター、妊産婦のパートナーである男性やそれ以外の家族を含め、地域全体で啓発教育を実施することで、母子の健康増進を目指します。 |
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子どもの下痢症低減 | 安全な水と石けんを備えた手洗い設備を整備するとともに、地域住民へ栄養と子どもの下痢症予防を含めた教育資材を用いて啓発教育を行います。地域住民の知識向上を通じて子どもの下痢症低減を目指します。 |
- ※1Social and Behaviour Change Communication
- ※2Sexual and Reproductive Health and Rights
活動状況
ガーナ初の妊婦待機所

妊婦待機所の開所式でテープカットをする関係者

妊婦待機所で行われたペインティングワークショップ

地域保健ボランティア、OTC薬の売り手の研修でジョイセフエプロンの使い方を指導

ジョイセフスタッフによるOTC薬の売り手に対する定期的なモニタリングと指導の様子

ジョイセフスタッフの指導を受けながら家庭訪問でのフリップチャートを使った啓発活動をする地地域保健ボランティア

母子保健推進員による家庭訪問

地域で開催されるママパパクラスの様子

支援地からの声
リジャイナ・ナーテ・テイエさん(川向うの地域に住む妊婦)

リジャイナさんは過去に5人の子どもを全て自力で出産し、そのうち3人はアカテン保健センターに行く途中、ボルタ湖を渡るボートで出産しました。自宅からアカテン保健センターに行くには徒歩とボートで4時間。救急の際にタクシーなどを利用する経済的な余裕もありません。プロジェクトで妊婦待機所が建設された後、リジャイナさんは事前に妊婦待機所に滞在してアカテン保健センターで無事出産。妊婦待機所を利用した出産第一号となりました。彼女は施設で医療従事者の介助で安全な出産ができてとても喜んでいました。リジャイナさんの出産後、さらに96人の赤ちゃんが妊婦待機所を利用して生まれています(2024年12月現在)。
デブラさん(地域保健ボランティア)

デブラさんはプロジェクトに関わることが生活に様々な恩恵をもたらすと思い、地域保健ボランティアになることを決めたそうです。研修では、最低4回の産前健診、施設出産、産後検診、6ヶ月間の完全母乳育児、子どもに食事を与える前やトイレ使用後の手洗い、家族計画の重要性などを学びました。デブラさんは、家庭訪問の際に自分のアドバイスで地域の女性たちが行動を変えていくことに喜びを感じ、この活動に誇りを持っています。また、以前は、ボルタ湖を渡ってくる女性たちはボートで出産したり、保健センターに間に合わず、母子が死に至ることが多かったため、妊婦待機所が女性たちの命を救うと期待していると答えてくれました。