旅で気をつけたい感染症

呼吸器・全身性の感染症

(1)新型コロナウイルス感染症

世界中で流行(パンデミック)を引き起こしているウイルス感染症です。インフルエンザやかぜに似た症状から始まり、発熱、咳、のどの痛み、頭痛、体のだるさなどがみられます。他には、嗅覚・味覚障害を訴える患者が多くあらわれます。高齢者や基礎疾患(慢性呼吸器疾患、糖尿病、心臓病など)のある人では、肺炎が重症化することが多いです。重症例では、1週間以上、発熱や咳などが続き、息切れなど肺炎に関連した症状を認め、その後、呼吸不全が進行し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全などを合併することがあります。予防には新型コロナワクチンの接種、こまめな手洗い、マスク着用などが有効です。

文 献

厚生労働省
介護現場における感染対策の手引き 第2版. 2021年3月
国立感染症研究所
コロナウイルスとは

などを参考にして作成

(2)インフルエンザ

38℃以上の高熱、頭痛、全身のだるさなどの症状が急激にあらわれるウイルス感染症です。のどの痛み、鼻水、咳などの症状もあらわれます。特に高齢者や免疫力が低下している人、基礎疾患のある人では、二次的な細菌感染による肺炎を起こすなど、重症になることがあります。こどもでは中耳炎、熱性けいれん、気管支喘息、急性脳症などの合併症が起こることもあります。毎年世界各地で流行がみられ、日本では主に冬に流行します。予防にはインフルエンザワクチンの接種、こまめな手洗い、マスク着用などが有効です。

文 献

厚生労働省
インフルエンザQ&A
国立感染症研究所
インフルエンザとは

などを参考にして作成

(3)肺炎球菌感染症

肺炎の主要な原因菌である肺炎球菌によって引き起こされ、突然、発熱と体のだるさがあらわれる感染症です。肺炎を起こすと、咳、血の混じったたん、寒け、呼吸困難、胸痛などの症状があらわれます。肺炎球菌は髄膜炎の原因菌でもあり、頭痛やけいれんが起こったり、首が動かしにくくなったりします。中耳炎や菌血症の原因にもなります。5歳未満のこどもがかかることが多く、高齢者では、インフルエンザなどのウイルス感染症に引き続いて、二次感染として発症する頻度が高くなっています。予防には肺炎球菌ワクチンの接種、こまめな手洗い、マスク着用などが有効です。

文 献

厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版. 2019年3月.
厚生労働省
肺炎球菌感染症(小児)
厚生労働省検疫所 FORTH
肺炎球菌感染症

などを参考にして作成

(4)レジオネラ症

レジオネラ属菌に汚染された水から発生するエアロゾル(水分を含んだ飛沫よりもさらに小さな粒子。細かい霧やしぶき)の吸入などによって感染し、発症する細菌感染症です。重症となるレジオネラ肺炎と軽症で済むポンティアック熱があります。レジオネラ肺炎は、全身のだるさ、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状から始まり、乾いた咳、38℃以上の高熱、寒け、胸痛、呼吸困難がみられるようになります。意識レベルの低下、幻覚、手足の震えなどの症状や、下痢がみられるのも特徴です。高齢者、新生児などは肺炎を起こす危険性が高いです。ポンティアック熱は、突然の発熱、寒け、筋肉痛がみられますが、多くは一過性で自然治癒します。循環式浴槽や加湿器の使用、温泉浴槽や河川で汚染水を飲み込んだりして感染することが多いです。人から人へ感染することはありません。

文 献

厚生労働省
レジオネラ症
国立感染症研究所
レジオネラ症とは

などを参考にして作成

(5)百日咳

特徴的な咳(コンコンと咳き込んだ後、ヒューと笛を吹くような音を立てて息を吸う)が連続したり、発作的に激しく起こったり、長期間続きます。小さな赤ちゃんでは特徴的な咳はなく、呼吸ができなくなる無呼吸発作や、全身が青紫色になるチアノーゼ、けいれんを起こし死に至ることもあります。乳幼児だけではなく、学童期、思春期のこどもや成人もかかりますが、年長児以降では咳の長引くかぜと思われるなど、軽症で見逃されがちです。しかし、重症化しやすい乳児の感染源となりますので、注意が必要です。予防には百日せき含有ワクチンの接種、こまめな手洗い、マスク着用などが有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版).
厚生労働省
百日せき
国立感染症研究所
百日咳とは

などを参考にして作成

(6)結核

主に肺に病変が生じ、長引く咳やたん、慢性的な発熱(微熱)、体のだるさなどがあらわれます。症状が進行すると全身の臓器に影響を及ぼし、呼吸困難、全身が青紫色になるチアノーゼなどがみられるようになります。結核性髄膜炎を併発すると、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどがみられます。特に高齢者や乳児では、気づかないうちに症状が進行してしまうことがあります。毎年新たに1万人以上の患者が発生し、約2千人が命を落としています。予防にはBCGワクチンの接種が有効です。早期発見のためには、日頃から結核の定期の健康診断を受けておくことが大切です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
厚生労働省
結核(BCGワクチン)
厚生労働省
結核は、過去の病じゃありません。(リーフレット)

などを参考にして作成

(7)麻しん(はしか)

発熱(38℃前後)、咳、鼻水、結膜充血、目やになどが最初にあらわれるウイルス感染症です。発熱はいったん少し下がり、口の中に白いぶつぶつ(コプリック斑)が出て、その後、再び高熱となり、発疹が顔や首から出始めて全身に広がります。発疹は赤みが強く、やや盛り上がっており、徐々にくっつきます。やがて熱は下がり、発疹は色素沈着を残して消えます。肺炎、中耳炎、熱性けいれんを合併しやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎を発症します。感染力が非常に強く、手洗い、マスク、感染者の隔離だけでは感染拡大を防止することは難しいです。予防には麻しん含有ワクチンの接種が有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
厚生労働省
麻しんについて
国立感染症研究所
麻疹とは

などを参考にして作成

(8)風しん

発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状があらわれるウイルス感染症です。赤くて小さい発疹は、通常、最初に顔や首に出て、やがて全身へと広がっていきますが、3日間程度で消え、色素沈着も残しません。感染しても症状が出ない人から、脳炎、血小板減少性紫斑病など重い合併症をきたす人まで症状は幅広いです。妊娠20週頃までの妊婦が感染すると、胎児に感染して、白内障や先天性心疾患、聴力障害などを引き起こす「先天性風しん症候群」を発症することがあります。予防には風しん含有ワクチンの接種が有効です。ただし、生ワクチンなので妊娠中は接種できません。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
厚生労働省
風しんについて
国立感染症研究所
風疹とは

などを参考にして作成

(9)水痘(水ぼうそう)

からだや四肢、顔や頭部に発疹が出る、感染力の強いウイルス感染症です。発疹は、かゆみを伴い、皮膚の赤み、ブツブツから短時間で水ぶくれとなり、最後はかさぶたになることで治ります。体のだるさや発疹のかゆみがあり、38℃前後の発熱が2~3日間続くこともあります。成人や妊婦、免疫機能が低い人などでは重症化するリスクが高いです。合併症には、皮膚の二次性細菌感染、脱水、肺炎、脳炎などがあります。水痘ワクチンの定期接種化により、低年齢のこどもの患者数は減少しています。予防には水痘ワクチンの接種が有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
国立感染症研究所
水痘とは

などを参考にして作成

(10)おたふくかぜ(流行性耳下腺炎・ムンプス)

発熱と耳下腺、顎下腺(耳の下や顎の下などの唾をつくる器官)の腫れや痛みがあらわれるウイルス感染症です。まず片側の耳の下などが腫れ、数日以内に、反対側が腫れることが多いです。腫れている部位には痛みがあり、唾液が出ることで痛みは増します。ムンプスウイルスに感染しても明らかな症状が出ない人が約30%おり、特に乳児で多いです。無菌性髄膜炎、難聴、脳炎、精巣炎、卵巣炎などの合併症をきたすことがあります。予防にはおたふくかぜワクチンの接種が有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)

などを参考にして作成

(11)侵襲性髄膜炎菌感染症(髄膜炎菌性髄膜炎)

発熱、頭痛、嘔吐を主症状とする細菌感染症です。急速に重症化する場合があり、劇症例では、紫斑(皮膚にできる紫色の皮下出血)を伴い、ショックに陥り、10%の人が亡くなります。回復した場合でも10~20%の人に難聴、まひ、てんかんなどの後遺症が残ります。乳幼児期から思春期によくみられます。髄膜炎菌の飛沫感染や接触感染で感染します。予防には髄膜炎菌ワクチンの接種が有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)

などを参考にして作成

(12)RSウイルス感染症

乳幼児期に初感染した場合、症状が重くなるウイルス性の呼吸器感染症です。特に生後6か月未満の乳児では、重い呼吸器症状があらわれ、入院が必要となることも少なくありません。一度かかっても何度もかかることがありますが、再感染した場合は、軽い咳や鼻水などしかみられないなど、徐々に症状は軽くなります。成人では、通常、鼻汁、のどの痛み、咳などの軽いかぜ症状があらわれます。主に秋から冬にかけて流行しますが、近年は夏にも流行がみられます。予防には、マスク着用やこまめな手洗いなどが有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)

などを参考にして作成

(13)マイコプラズマ肺炎

長引く咳を特徴とした細菌感染症です。主な症状は咳で、発熱や頭痛等のかぜ症状がゆっくり進行しますが、咳は徐々に激しくなり、数週間続くことがあります。肺炎を引き起こし、重症化することもあります。主にこどもがかかる病気ですが、成人にもみられます。乳児など低年齢児の患者は少なく、学童では頻度の高い病気です。1年を通じてみられますが、夏から秋にかけて流行することが多く、冬にやや増加する傾向もあります。家庭内感染、学校などでの施設内感染がみられます。予防にはこまめな手洗い、マスク着用などが有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
厚生労働省
マイコプラズマ肺炎に関するQ&A

などを参考にして作成

細菌性食中毒

(14)腸管出血性大腸菌感染症(O157、O26、O111など)

腸管出血性大腸菌で汚染された牛肉(生または加熱不十分)などさまざまな食品を食べることで感染し、発症する感染症です。多くの場合、最初に激しい腹痛を伴う水のような下痢が頻回に起こります。その後、血便になります(出血性大腸炎)。溶血性尿毒症症候群(急性腎不全など)を起こし、生命にかかわる場合もあります。気温が高い初夏から初秋にかけて発生することが多いですが、気温の低い時期でも発生がみられます。感染した動物と接触することで感染することがあります。予防には生肉または加熱不十分な肉を食べないことや、こまめな手洗いなどが有効です。

文 献

厚生労働省
腸管出血性大腸菌Q&A
国立感染症研究所
腸管出血性大腸菌感染症とは

などを参考にして作成

(15)サルモネラ感染症

サルモネラ菌で汚染された肉、卵などを食べることで発症する感染症です。吐き気(ときには嘔吐)で始まり、その後、腹痛や下痢、発熱がみられます。下痢は1日数回から十数回起こり、3~4日続きますが、1週間以上に及ぶこともあります。軽症で済むこともありますが、乳幼児、高齢者、免疫力の弱い人では重症化することがあり、生命にかかわることもあります。しばしば集団感染を起こします。感染したペットと接触することで感染することがあります。予防には食品の加熱、こまめな手洗いなどが有効です。

文 献

厚生労働省検疫所 FORTH
サルモネラ症(チフス以外)(ファクトシート)
国立感染症研究所
サルモネラ感染症とは

などを参考にして作成

(16)カンピロバクター感染症

国内で発生している細菌性食中毒でもっとも多いものです。カンピロバクター属菌で汚染された鶏肉(生または加熱不十分)などを食べることで感染し、発症します。下痢や嘔吐、腹痛などの胃腸炎症状の他、発熱、頭痛、寒け、体のだるさなどがあらわれます。乳幼児や高齢者などでは、まれに重症化することがあります。感染したペットと接触することで感染することがあります。予防には生肉(鶏肉の刺身、牛レバーなど)または加熱不十分な肉(特に鶏肉)を食べないことや、こまめな手洗いなどが有効です。

文 献

厚生労働省
カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)
国立感染症研究所
カンピロバクター感染症とは

などを参考にして作成

(17)腸炎ビブリオ感染症

腸炎ビブリオ属菌で汚染された魚介類などを食べることで感染し、発症する感染症です。激しい腹痛、水のような下痢や粘液のような下痢が、1日数回から十数回みられます。まれに血便がみられることもあります。しばしば発熱(37〜38℃)や嘔吐がみられます。高齢者では低血圧、心電図の異常などがみられることや、亡くなることもあります。7〜9月に流行がみられます。予防には魚介類などの低温保存や食品の加熱が有効です。

文 献

国立感染症研究所
腸炎ビブリオ感染症とは

などを参考にして作成

寄生虫による食中毒

(18)アニサキス症

アニサキス幼虫が寄生している魚介類(サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなど)を生で食べることで幼虫が胃や腸に入り込んで感染し、発症します。幼虫は長さ2〜3cm、幅は0.5〜1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。多くを占める急性胃アニサキス症では、食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、吐き気、嘔吐を生じます。急性腸アニサキス症では、食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。予防は、魚介類の生食を避けること、新鮮な魚を選び内臓を取り除くことや目視してアニサキス幼虫がいないかを確認することです。また、加熱(60℃で1分以上)や、生で食べる場合には冷凍処理(-20℃、24時間以上)して解凍後に食べることも有効です。一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。

文 献

厚生労働省
アニサキスによる食中毒を予防しましょう

などを参考にして作成

ウイルス性胃腸炎

(19)ノロウイルス感染症

ノロウイルスで汚染された食品(特に牡蠣などの二枚貝の生食)や水、手を介して、ウイルスが口に入ることで感染し、発症するウイルス感染症です。感染者の嘔吐物や便に触れたり、それらが乾燥して空気中に舞い上がって吸い込むことで感染することもあります。感染力が強く、少量のウイルスでも感染が起こり、下痢や嘔吐などの症状があらわれ、脱水を起こすことがあります。こどもだけでなく、成人にも多くみられます。こどもや高齢者などでは重症化する場合があります。1年を通じてみられますが、特に秋から冬にかけて流行します。予防にはこまめな手洗い、食品の加熱などが有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
厚生労働省
ノロウイルスに関するQ&A
国立感染症研究所
ノロウイルス感染症とは

などを参考にして作成

(20)ロタウイルス感染症

ロタウイルスで汚染された手を介して、ウイルスが口に入ることで発症するウイルス感染症です。感染力が強く、水のような下痢(白い便になることがある)や嘔吐が繰り返されます。脱水を起こし、まれにけいれんや脳症を起こすことがあります。冬から春にかけて流行します。主に乳幼児(0~6歳頃)がかかる病気ですが、成人もかかります。5歳までにほぼ全ての人が感染し、乳幼児における重症急性胃腸炎の主な原因となっています。予防にはロタウイルスワクチンの接種(重症化を予防する)、こまめな手洗い、食品の加熱などが有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
厚生労働省
ロタウイルスに関するQ&A
国立感染症研究所
ロタウイルス感染性胃腸炎とは

などを参考にして作成

主に食べ物由来の他の感染症

(21)A型肝炎

A型肝炎ウイルスで汚染された食べ物(牡蠣など)や水の摂取、性行為でも感染し、発症します。強い全身のだるさ、発熱、頭痛、吐き気・嘔吐、食欲低下、腹痛、みぞおちの痛み、筋肉痛などがみられ、その後、黄疸(おうだん; 皮膚や眼球が黄色くなること)があらわれます。尿の色が濃くなったり(褐色尿)、便の色は白っぽくなる(灰白便)ことがあります。成人に比べて、こどもは軽症であることが多いです。慢性化することはなく大部分は治りますが、まれに劇症化することもあります。予防にはA型肝炎ワクチンの接種が有効です。

文 献

国立感染症研究所
A型肝炎とは
東京都福祉保健局
性感染症ってどんな病気?

などを参考にして作成

(22)E型肝炎

E型肝炎ウイルスで汚染された食べ物や水を摂取することで発症するウイルス感染症です。症状はA型肝炎に似ており、黄疸(おうだん; 皮膚や眼球が黄色くなること)が高い率であらわれ、発熱、吐き気、腹痛、濃い色の尿(褐色尿)がみられます。症状が出ない不顕性感染が多い(特に若年者)とされる一方、まれに劇症化することがあり、妊婦(特に妊娠晩期)や高齢者などは重症化、劇症化しやすいとされています。E型肝炎ウイルスは、豚レバーを含む豚肉の生食、シカやイノシシなど野生動物の肉の生食で感染することが知られています。予防には豚レバーやシカ、イノシシなどの肉を生で食べないこと、衛生状態のよくない飲料水を生で飲まないこと、こまめな手洗いなどが有効です。

文 献

国立感染症研究所
E型肝炎とは
厚生労働省
E型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&Aについて

などを参考にして作成

こどもがかかりやすい感染症

(23)咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症)

高熱、扁桃腺炎、結膜炎を主症状とするウイルス感染症です。こども(幼児から学童)によくみられます。塩素消毒が不十分なプールの水を介する感染もありますが、それよりも接触感染や飛沫感染による感染が多いです。一年を通じてみられますが、特に夏に多く、代表的な夏かぜとされています。予防にはこまめな手洗い、タオルの共有を避けることなどが有効です。

文 献

厚生労働省
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)

などを参考にして作成

けがをきっかけとした感染症

(24)破傷風

破傷風菌が傷口から体内に侵入して発症する感染症です。破傷風菌が作る毒素が神経に作用して筋肉のけいれんやこわばりがあらわれ、口を開けにくい、首筋の張り、体のしびれや痛みといった症状がみられます。その後、全身の筋肉が硬くなって弓反りしたり、呼吸困難で死亡することもあります。人から人へ感染することはありません。破傷風菌は、世界中いたるところの土や動物のフンなどに存在します。汚泥を触る可能性があるときなどは、手袋や厚底の靴などを着けて直接肌に触れないようにし、特に、傷があるときは十分注意します。予防には破傷風トキソイド含有ワクチンの接種が有効です。

文 献

厚生労働省
破傷風
厚生労働省検疫所 FORTH
破傷風
国立感染症研究所
破傷風とは
国立感染症研究所
令和元年台風第19号関連・地域の感染症発生状況と感染症対策について(2019年10月18日現在)

などを参考にして作成

動物由来感染症-蚊-

(25)デング熱

デングウイルスを保有する蚊(主にヒトスジシマカやネッタイシマカ)に刺されることで発症する感染症です。突然の高熱で発症し、頭痛、眼の奥の痛み、結膜充血などがみられます。その後、筋肉痛や関節痛を生じることが多く、腹痛や便秘を生じることもあります。発症してから3~4日後に、発疹が胸部やからだに出始め、やがて四肢や顔へと広がっていきます。通常、1週間程度で回復します。感染しても症状があらわれない場合も多いです。一方、まれに突然、血漿漏出に伴うショックと出血傾向を主症状とした致死性の高いデング出血熱を発症することがあります。屋外で活動する際には、肌の露出を少なくした服装をすること、虫除けスプレーの使用が大事です。

文 献

厚生労働省
デング熱に関するQ&A
国立感染症研究所
デング熱とは

などを参考にして作成

(26)日本脳炎

日本脳炎ウイルスを保有する蚊(コガタアカイエカなど)に刺されることで感染します。感染しても発症するのは100~1000人に1人程度であり、症状が出ない(不顕性感染)ことがほとんどです。しかし、発症した場合は、突然の高熱、頭痛、嘔吐などから始まり、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こし、後遺症を残すことや死に至ることもあります。予防には、日本脳炎ワクチンがあり、小児の定期接種ワクチンになっています。また、屋外で活動する際には、肌の露出を少なくした服装をすること、虫除けスプレーの使用が大事です。

文 献

厚生労働省
日本脳炎
国立感染症研究所
日本脳炎とは

などを参考にして作成

動物由来感染症-ダニ-

(27)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

主にウイルスを保有しているマダニ(フタトゲチマダニ、タカサゴキララマダニなど)にかまれることにより感染し、発症します。発熱、消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)がみられ、ときに頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴います。重症化することもあり、10~30%程度の人が亡くなります。草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、足を完全に覆う靴(サンダルなどは避ける)、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻くなど肌の露出を少なくすること、虫除けスプレーを使用することが大事です。

文 献

厚生労働省
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
国立感染症研究所
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

などを参考にして作成

(28)ツツガムシ病(リケッチア症)

ダニの一種であるツツガムシの幼虫にかまれることで菌(リケッチア)に感染し、発症します。39℃以上の高熱が出て、数日以内にからだを中心として発疹があらわれます。ダニの刺し口の跡が見られることも特徴です。一部の地域を除いて全国で発生がみられます。季節によって患者発生数は異なり、春~初夏、秋~初冬の2つの発生ピークがあります。草むらに立ち入る際には、虫除けスプレーを使用し、肌の露出を少なくした服装をすることが大事です。

文 献

国立感染症研究所
ツツガムシ病とは
国立感染症研究所
令和元年台風第19号関連・地域の感染症発生状況と感染症対策について(2019年10月18日現在)

などを参考にして作成

(29)日本紅斑熱

病原体(リケッチア)を保有するマダニ(キチマダニ・フタトゲチマダニなど)にかまれることにより感染し、発症します。発熱、発疹、ダニの刺し口がほとんどの症例にみられ、頭痛、発熱、体のだるさなどを伴います。ツツガムシ病との区別がつきにくいですが、ツツガムシ病では発疹は胴体にあらわれ、刺し口の中心のかさぶた部分が大きいのに比べ、日本紅斑熱では発疹は手足の末端部に比較的強くあらわれ、刺し口の中心のかさぶた部分は小さいのが特徴です。患者の発生は媒介ダニの活動が活発化する4月~10月に見られ、特に9月、10月に多いです。死亡例も報告されています。草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、サンダルのような肌を露出するようなものは履かないこと、虫除けスプレーを使用することが大事です。

文 献

厚生労働省
日本紅斑熱について

などを参考にして作成

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